建設塗装の懸案だった「特定技能外国人制度」が大きく動いた。政府は特定技能外国人が従事できる業務区分の統合を8月30日に閣議決定。建設業におけるすべての職種が特定技能の対象となり、建設塗装、鋼橋塗装も特定技能外国人が従事できるようになった。現行の外国人技能実習生が特定技能にスライドするなど、外国人材の戦力化が進むことになる。

特定技能外国人制度は、国内で人材を確保することが困難な職種において、一定の専門性・技能を有する即戦力の外国人を受け入れる制度で、2019年4月に創設された。従来の外国人技能実習生制度が、日本の技術や知識を発展途上国などに移転する国際協力を目的にしているのに対し、特定技能は国内の深刻な人手不足を補うとの明確な目的で設けられた新たな在留資格。

建設分野における特定技能はこれまで、建築板金、建築大工、型枠施工、鉄筋施工、とびなど19区分に対象が限られていたが、今回、この区分の在り方を大幅に見直し、建設業に係るすべての作業を新区分に分類。従来、特定技能の対象から外れていた「塗装」も新区分に包含されることになり、塗装業も特定技能外国人の受け入れが可能になった。

業務区分の統合では、職種ごとに細分化した従来の19区分を、「土木」「建築」「ライフライン・設備」の3区分の大枠に統合、それぞれの区分の中に各専門工事業が位置付けられる。例えば建設塗装や鋼橋塗装を担う「塗装」は、「建築区分」にも「土木区分」にも分類されているといったようなことだ。

更に、従来の19区分は業務範囲が限定的だったのに対し、「建築区分」の「塗装」で登録した特定技能外国人であっても、「防水施工」や「内装仕上」「左官」など建築区分内で分類されている多くの作業に職種横断的に従事できるのも今回の区分統合のポイント。多能工としての人材育成ができることで生産性向上も見込め、「建設業の実情に即した使い勝手のいい改正」(業界関係者)との見方も出ている。

特定技能外国人の在留資格の取得に関しては、現行の外国人技能実習生制度で「2号技能実習」を良好に修了した者は、そのまま無試験で「特定技能1号」(在留期間通算5年)に申請、登録できる。従って技能実習生で3年修了者がそのままスライドするイメージで、このルートが最も多いケースになる見込み。2号技能実習未経験者は、技能評価試験や日本語試験による基準が設けられている。

また、特定技能1号を修了し、班長として一定の実務経験と所定の試験または技能検定1級に合格すると、在留期間が無期限で家族の帯同も可能な「特定技能2号」に申請・登録できるスキームだ。

なお、特定技能外国人を受け入れる企業は、特定技能外国人受入事業実施法人のJAC(建設技能人材機構)に加入しなければならない。建設業団体で加入する正会員と、個別の事業者などで加入する賛助会員があり、それぞれ年会費が規定されている。また、正会員の建設業団体への加盟事業者は間接的入会のため年会費の負担はなく、特定技能外国人を受け入れた場合の受け入れ負担金(技能実習2号修了者・1万2,500円/月)のみとなっている。

塗装関連では、日本塗装工業会、マンション計画修繕施工協会がJACの正会員として入会している。