大伸化学(東京都、堀越進社長)、オー・ジー(大阪府、福井英治社長)、極東メタリコン工業(兵庫県、小寺悟史社長)の3社で共同開発した増膜型塩分低減剤「ソルトリッパーFM」が、鋼構造物塗装における塩分処理で関心が高まっている。

沿岸地域など腐食しやすい環境におかれた橋梁では、塗り替えを行っても早期に錆が表面化する問題が発生している。原因の1つとして素地調整後に残存する塩分が考えられる。

塩分処理方法としてブラストや水洗いが実施されているが、多くの労力がかかってしまう。

ブラストでは塩分を除去できず低減する効果しかないため複数回の施工を繰り返すことになり工期が延びる。一方、水洗いでは足場内に処理水が溜まり次工程の妨げになるため、ある程度回収する必要がある。

また、橋梁下に住宅や一級河川が広がっている場合はそもそも水洗いができないケースもある。そのため新たな塩分処理方法が求められている。

開発された「ソルトリッパーFM」は素地調整後に塗布することで残存塩分を取り込み、乾燥後に塩分を含んだ塗膜を除去する。

主成分の水に加えてチキソ性の高い増粘剤を含んでいるため、吹付しても流れ落ちず鋼材表面に溜まる。その後、一度水の中に溶け込んだ塩分は水の蒸発に伴い被膜に移行する。乾燥した塗膜は鋼材表面から手で剥がすことができるため、排水処理が不要で廃棄物量を抑えることが可能となる。

施工手順は、塩分測定(素地調整前)→素地調整(ブラスト)→塩分測定(素地調整後)→マスカー養生→ソルトリッパーFM塗布(0.5~1.0kg/㎡)→乾燥(12時間以上)→除去(手作業もしくはブラスト)→塩分測定→素地調整→塗装工程。

通常、塩分処理工程は素地調整作業と並行して実施されることが多く、「ソルトリッパーFM」であれば被膜を形成するので、鋼材面を粉塵から守る効果もある。

また、主成分が引火性のない非危険物の水であり、配合する添加剤についても人体に対する危険有害性の少ないものを使用し、作業者の安全性にも考慮した設計となっている。

「ソルトリッパーFM」は既に市場販売をスタートしており、社会インフラの維持管理が重要視される中、厳しい腐食環境にさらされている橋梁を錆から守ることに貢献していく。それととともに今後の展開として、実現場での検証を継続することで使用方法の最適化を目指す。