車体整備業の価格交渉に新局面

車体整備事業者が損保会社に対して行う工賃単価の価格交渉が新たな局面を迎えている。国土交通省は3月4日付で「車体整備事業者による適切な価格交渉を促進するための指針」を公表。これを受け車体整備事業者は「透明性の確保がなされている車体整備事業者が、適正に価格交渉ができる業界を行政が後押ししてくれる発表」(日本自動車車体整備協同組合技術副委員長・斎藤和実氏)と評価。一方、車体整備事業者にとって業務の透明性確保が重要になるとの認識を高めている。

 


塗料商社の古清水商会(本社:東京都江戸川区、代表取締役:下山正晴氏=写真)は5月22日にタワーホール船堀で勉強会「泉クラブ」を開催。今回は「国土交通省による車体整備事業者による適切な価格交渉を促進するための指針に基づいた見積りについての活用方法」をテーマに、日本自動車車体整備協同組合技術副委員長と東京都自動車車体整備協同組合副理事長を務める斎藤和実氏(ラーニングストリーム代表取締役兼優流取締役会長)が解説した。

国交省が動いた背景として、指針の中で「車体整備事業者と損害保険会社との間の交渉において、昨今の労務費、原材料価格、エネルギーコスト等の上昇分を適切に価格転嫁できていないことを強く訴える声や、修理方法・範囲や修理費用等に関する見解が相違する場合の対応の難しさを指摘する意見が寄せられている」と示されており、国としては車体整備事業者の厳しい環境の改善を図る狙いがある。

斎藤氏はビッグモーターの悪事利用や特定整備認証制度を背景として、「透明性の確保がなされている車体整備事業者が、適正に価格交渉ができる業界を行政が後押ししてくれる」と好意的に受け止めると同時に、「裏を返すと今後は透明性の確保(工場認証、人的資格、設備、法令順守)ができていない軒下鈑金屋には向かい風になっていく可能性が高い」との見方を示した。

研修会で斎藤氏は国交省の指針の内容について解説し、車体整備事業者が取り組むべき事柄などを説明した。その上で、「国交省指針で一番重要にしていることは透明性、公平性、妥当性なので、すべての事柄に根拠(エビデンス)を示すことができるようにしておくこと。指針を利用するということは、自社自体が根拠を持つことになる」とし、根拠を示しデータを管理する必要性を呼び掛けた。

古清水商会が定期開催する泉クラブは「弊社の企業理念である湧き出る『何か』を価値にするという言葉をもとに、何らかの形で車体整備の皆様のお役に立ちたいという思いから、価値ある情報の提供やお客様同士の情報共有の場を提供したいという目的として、2016年に始まりました」(下山社長)と説明。経営の未来に立ち向かうリーダーにとっての「オアシス」(=泉)になればと名称された。

今回の泉クラブには、時事要素の高いテーマだったこともあり、同社の顧客17名に加えて、国土交通省の自動車整備課整備事業指導官の村井章展氏をはじめ、日車協連の委員長クラスが14名参加し盛り上がりを見せた。

国交省の村井指導官は「工賃単価の交渉の指針は初めて出すものなので、万能薬ではない。この1回で直ちによくなるとは思っていません。指針を出して現場の損保会社との交渉がどのように変わるかを見て、足りないところもあると思うので、情報提供窓口に情報を頂いたら指針のアップデートなどに生かしていきたい」と参加者に情報提供を呼び掛けた。



古清水商会・下山正晴氏
古清水商会・下山正晴氏

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