外装塗料の耐用年数推定法を確立

鹿島建設(本社・東京都、代表取締役社長・押味至一氏)は建設業界で初めて、建物の外装に用いる塗料の耐用年数を製品や使用地域に応じて推定する方法を確立した。これにより建物に要求される耐用年数に応じた塗料を合理的に選定できるとともに、適切な更新時期を推定することで効果的な維持管理に寄与できるとして、新築物件において積極的に活用していく方針を示す。


近年、建物の長寿命化に伴って長期にわたって性能を維持できる外装塗料が求められている。そのときに重要になるのが塗料の耐候性だ。一般的に外装塗料の耐候性品質はJISで分類されるが、JIS品質基準で同級と評価された塗料であっても、「メーカーや製品ごとにその耐久性にばらつきがある」との見方がある。

更に塗料を劣化させる原因となる外気温や紫外線量は地域や建物が面している方向(日光の当たり方)によっても大きく異なることから、これまで外装塗料の耐用年数を高い精度で推定することは困難とされてきた。

そこで同社は2008年から研究開発の調査をスタートさせ、2010年からは暴露試験など本格的に取り組んできた結果、このほどの技術確立に至った。

同技術は実環境下の塗膜の耐候性を合理的に評価する方法であり、耐候性評価は促進耐候性試験機や、屋外環境下でポリエチレンリファレンス試験片が紫外線や熱などで酸化劣化したときに生成するカルボニル基の定量をカルボニルインデックス(CI)で表した共通指標(CI積算値)を劣化外力として用いることを特徴としている。

つまり、一般的な指標となっている実環境○○年、暴露試験○○年、促進耐候性試験○○時間といった時間や年数だけではなく、劣化外力の積算量を指標としている。

外装塗料の耐用年数は光沢保持率30%に低下するまでの年数とし、このCI積算値を基準に外装塗料の促進耐候性試験と屋外暴露試験の相互データから塗膜の光沢保持率が30%に低下する年数を合理的に評価することができる。

これに日本各地の気象データなどから定量化した「使用地域ごとの劣化外力(外気温や紫外線量)の強弱」を加味することで外装塗料の耐用年数を製品・地域ごとに推定する。

同手法を用いて推定した耐用年数と全国の同社施工物件で劣化状況を実測したサンプル結果との間に高い相関性が認められたことから、2016年9月、日本建築センターの建設技術審査証明を取得。「第三者機関において既存技術と比べて優位な特徴を有することを客観的に審査し証明したもの」(同社)。

100種類・45地域をカバー
施主への提案に強み

現在、同社では約100種類の外装塗料について全国45の地域での利用を対象とした耐用年数の推定が可能としている。塗料については、溶剤塗料だけでなく粉体塗料など、これまで使用実績があり国内調達できる塗料(国内及び外資系)をカバーしている。

新たな塗料に関しても促進耐候性試験で耐候性を確認することで同手法を適用できるとしている。

具体的な検索システムとしては、使用地域と材料名を入力すると推定耐用年数が算出され、使用地域と要求年数を入力すると材料候補が算出される。維持管理においても建物外装の適切な更新時期が推定でき、効率的な維持管理計画を立案できる。

対象となる外装はコンクリート下地+塗装仕上げやカーテンウォールなどのアルミ建材、断熱パネルなど木部以外の建物外装を想定する。

実際に同手法を活用することで塗料選定を合理的に進めることが期待できる。通常、新築建物の外装塗料を選定する際、各塗料メーカーからの塗料データを取りまとめたり、自社で性能試験を実施したりして評価を行って選定している。

その際、評価方法や条件が異なるため同じ基準で選定できないという課題があったが、同手法を確立したことで選定基準を平準化できるため、施主により具体的な提案が可能になる。

同社では「更なる精度向上を図りながら本手法を積極的に適用し、外装仕上げの耐久性向上とLCCの削減に貢献していく」方針だ。

耐用年数の推定イメージ



耐用年数の推定イメージ
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