建築塗装の現場で吹付塗装ロボットの実用化が始まった。ゼネコン大手の鹿島は、建設塗装会社・竹延(本社・大阪市、竹延幸雄社長)と壁面吹付ロボットを共同開発し、実工事に初めて適用した。ロボットによる施工により、熟練塗装工と同等の塗装品質を確保しながら塗装作業全体に要する人工を従来の人による作業と比べて約3割削減することを実証。更なる性能向上を図り、塗装品質と生産性向上を進める。

共同開発した吹付塗装ロボットが適用されたのは、兵庫県内の建築現場における建物内部のALCの壁(475㎡)の部分塗装。下地処理や養生などを含む塗装作業全体の人工は、従来の人による作業が4.8人日であるのに対して3.2人日と、約3割削減できた。また、塗装品質についても熟練塗装工と同等の水準を確保したことを確認した。

ロボットは、センサにより壁との距離を一定に保ちつつ移動しながら吹付ノズルを上下して壁面を塗装する。一定速度、一定角度で吹付ノズルを動かして、1回の吹付で膜厚を確保する。1時間当たり110㎡以上の壁面を塗装する能力があり、機材には汎用品を用いているため部品交換の保守も容易で実用性が高い。

開発には、以前から竹延が取り組んできた塗装ロボット開発のノウハウが生かされており、特に熟練塗装工が持つ感覚的な技の数値化やマニュアル化などのデジタル技術が盛り込まれた。端部などロボットによる塗装の難易度が高い部位については、従来通り人が作業することとして開発期間の短縮、製作コストの抑制、構造の簡素化、操作の簡略化などを図り、実用化を優先した。

鹿島は、建設業の人手不足や働き方改革の実現に向けて建築工事に関わるあらゆる生産プロセスの変革を推進して生産性向上を目指す「鹿島スマート生産ビジョン」を2018年に策定。各種の施工ロボットや現場管理ツールなどの適用、実証を始めており、今回の塗装ロボットの開発、実用もその一環。

共同開発した竹延の竹延幸雄社長は、「建設業、とりわけ当社の市場領域である建築塗装分野は、いまだ鎌で稲刈りをしているような状態です。その生産性や働き方を抜本的に見直すためにも、人の技能伝承だけでなく、ロボットへの技能伝承を同時に進めていくべきだと信念を持っています」とし、建築塗装のイノベーションに取り組む。