施工管理業務をサポート「建設アシスタント」始動

建設業の労働改革へ向けた新たな展開が始まっている。建設塗装業大手の竹延(本社・大阪市、社長・竹延幸雄氏)のグループ会社・KMユナイテッド(本社・京都市、社長・同)が今年5月にスタートさせた「建設アシスタント」派遣事業が本格的に動き始めた。施工管理者(現場監督)の業務をサポートする人員を建設業者に派遣する事業で、施工管理者の業務負担を軽減する新たなサービス。建設業の働き方改革施行を前に、大手ゼネコンなどでの採用が決まりだした。


今年4月から中小企業にも「時間外労働の上限規制」が適用され、長時間労働の是正へ向けた働き方改革が国を挙げて進められている。ただ、建設業に関しては担い手不足の課題が解消されず時間がかかるとの理由で、時間外労働の上限規制の適用は2024年度まで猶予されている。

建設労働者の就業時間は2,036時間/年で、全産業平均に比べて年間で300時間以上も多いとされている。更に、週休2日を取得できている人は全体の1割以下で、全く取得できていない人が4割以上いることも分かっており、若者の入職促進、担い手不足解消に向け、長時間労働の是正は最重要課題となっている。

担い手不足の中でも特に深刻度が増しているのが施工管理者の不足だ。工程ごとの業者の調整や進捗管理、安全対策、工事品質のチェックなど現場での管理業務に加えて、施工図版業務、予算管理、諸々の建設事務業務などデスクワークの残業も多く、建設業従事者の中でも最も長時間労働を強いられる職種になっている。このため若い人材が集まらないことに加えて離職率も高く、人手不足が加速。更に2024年の時間外労働の上限規制への対応からも施工管理者の業務負担を軽減することが建設業界を挙げた課題となっている。

こうした課題の解消に向けてKMユナイテッドが始めたのが「建設アシスタント」の派遣事業だ。建設アシスタントは、現場写真の整理や日報のとりまとめなど施工管理関連の事務作業を担当して施工管理者の仕事をサポートする新たな職務領域。

同社の分析によると、施工管理者の業務のうち50%前後がデスクワークに関連するものとなっており、それらの仕事を建設アシスタントが分担することで施工管理者の業務負担が軽減、長時間労働の解消に役立つ。同社は、こうした分業による働き方改革をゼネコンなどの建設事業者に提案、採用が始まりだした。

10月にはプラント建設、建築・構造物建設大手の日鉄エンジニアリングでの建設アシスタントの採用が決定。関西地区から開始し、順次東京、福岡地区へ拡大していく。この他にも既に数社のゼネコンで建設アシスタントの採用が始まっており、「施工管理者の業務負担軽減に即効性があると好評です」(KMユナイテッド担当者)と、新たなサービスとして建設業界に普及させていきたい考えだ。

派遣する建設アシスタントは同社の正社員で、月給制で雇用、建設現場に関する幅広い知識やスキルを持つ。採用はCAD取得レベルを指標に、新規採用者には経験者から実践的教育を実施し、育成期間の短縮を図る。

派遣先では施工管理関連の事務作業を担当するが、クラウド上のソフトやチャットツールを活用して同社が構えたサテライトオフィスで作業にあたる。現場に毎日通う必要がないため、介護や育児中など家庭の事情で働きにくい人材の職場復帰も可能だ。既に20名ほどの建設アシスタントが派遣先で活躍している。

同社では、「施工管理者の負担軽減とともに、能力がありながら学歴や職歴などの事情によって就職がかなわない、いわゆる未発掘の人財である『労働弱者』が活躍する機会創出を目指します」とし、2030年には2,100名の採用(派遣)を計画。担い手不足解消と労働弱者の機会創出へ向けた新たな職域づくりに挑む。



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