日本塗装機械工業会(CEMA:佐伯直泰会長)は10月19日、第23回技術シンポジウムをオンラインにて開催した。当日は140名以上が受講した。
今回はSDGsに対応する塗料塗装技術を考えるPart1として「カーボンニュートラルと人材減少社会への対応」をテーマに講演が行われた。
最初に基調講演として東京電力エナジーパートナーの原田光朗氏が「GX(Green Transformation)への対応 2050年カーボンニュートラルの柱は電化・水素化」と題し講演した。
GXとは「産業革命以来の化石エネルギー中心の産業構造・社会構造をクリーンエネルギー中心へ転換する」ことで、今年2月にGX実現に向けた基本方針が閣議決定されるなど脱炭素社会への移行が進められている。
原田氏は現在の発電方式において割合の大きいLNG(天然ガス)と石炭の転換が重要とし、「LNGと石炭の火力発電にアンモニアと水素を、まずは混焼しその後専焼する」対策を解説した。水素はLNG火力発電と、アンモニアは石炭火力発電と相性が良い、つまり燃焼速度などが比較的近いため転換しやすいと説明するとともに2050年に向けた転換スケジュールを紹介した。
一方で、「電化・水素化の社会を実現するにはもう少し時間が必要。だから今やることは徹底した省エネとロスの削減」と指摘し、塗装乾燥の省エネ対策事例や日本エレクトロヒートセンターの塗装乾燥炉の実例、保温・断熱性能向上の技術などを紹介した。
旭サナック、タクボエンジニアリングが登壇
一般講演では旭サナックの梅田陽平氏が「未来へ向けた"箱型ワークの粉体塗装システム"」について講演。働き手不足が進む上ではオートメーション化が重要との見方を示した。
昨年、同社は粉体技術センターを建設し、ツインムーバレシプロ塗装システムや色替えシステム、箱物簡易ティーチングを完備している。
箱物ワークの自動塗装を例に挙げ「塗装の難易度が高く負担も大きいという課題を改善した」としてツインムーバレシプロで全体塗装を行い、箱物簡易ティーチングによるロボット塗装で内面を補正塗装することで、多種の箱型ワークに対する負担軽減を解説した。合わせて、導入効果として塗料使用量の削減及び塗料費用の削減などについて事例を挙げて具体的な数値で効果を示した。
一般講演で、タクボエンジニアリングの布施昌純氏は「インジウムミラー塗装システム 塗装による鏡面塗膜の実現」について紹介した。
インジウムは柔らかい銀青白色の金属で、耐候性や耐食性がある一方で、銀同様に高価なため塗料消費量をいかに少なくするかが最大の課題。
布施氏は「この課題を解決するためにRの技術による回転塗装が必要になった」と述べ、同社の"Rの技術"により、少ない塗料で高品質及び高い生産性を実現した。
インジウム塗料は自動車外装部品にも適用可能であり、電波透過性に優れているため自動車センサーの用途でも使用できる。
布施氏は"Rの技術"の特徴である薄く・速く・キレイに塗れるメカニズムについて動画を使いながら解説した。また、新たに開発したティーチングをアシストするソフト「SWANIST(スワニスト)」の紹介も行った。
その他の講演では「カーボンニュートラルに貢献する安川インバータ&モーターの取組み」(安川電機)、「超高塗着エアレス塗装を基点としたCO2削減自動車塗装システム開発」(トヨタ自動車)、「ファナックロボットによるSDGs/サステナビリティへの取組」(ファナック)が行われた。