ロボット塗装の自動化へ、NTT東日本と実証実験

工業塗装専業者のヒバラコーポレーション(本社・茨城県那珂郡東海村、代表取締役社長・小田倉久視氏)はロボット塗装の自動化や遠隔操作の実現に向けた開発を推進している。昨年、NTT東日本と共同でエッジコンピューティング環境を活用した塗装ロボットの遠隔動作のプログラミング送信テストを実施した。工業塗装の現場が抱える人材不足や技術継承の問題を解決するシステム構築を目指す。


ヒバラコーポレーションは工業塗装専業者として長年培ったノウハウを生かし、工業塗装における熟練工技能の伝承や現場管理手法の開発を進めている。具体的には工業塗装業向け生産管理システム(製品名『HIPAX』)の展開や、熟練工の技術をデータ化し自社開発ロボットを用いた技術再現システムの開発などを行っている。

今般、同社はロボット塗装の自動化の実現に向けた検証の第一弾として、NTT東日本と共同で塗装対象物(ワーク)のAI画像認識による判定についてエッジコンピューティングを用いて行った。

エッジコンピューティングとは、コンピュータネットワークの周縁(エッジ)部分でデータを処理するネットワーク技術のこと。すべてのデータを集約しデータ処理を行う従来型のクラウドコンピューティングに対し、データ加工や処理の一部をエッジサーバで行うため、データ処理時間やセキュリティに優れるといった特長がある。

エッジコンピューティングはNTT東日本が行うAIやIoT技術の社会実装に向けた共同実証環境「スマートイノベーションラボ」を活用した。

ワークのAI画像認識、わずか0.5秒

昨年7月~11月末の期間に実施した実証実験に伴って、ヒバラコーポレーションがロボットによる塗装プログラムとワークを判定するプログラムを開発した。一方、NTT東日本はエッジコンピューティング環境の提供とネットワーク環境の構築を担った。

あらかじめ塗装ラインのコンベアを流れるワークを撮影し、AIの学習データを作成した。43種類のワークについて1ワーク当たり30~50枚の画像を学習した。その結果、AI判定の正答率は100%を達成した。

実験は塗装ラインで塗装ロボットによる自動化を想定したもので、実施内容は①塗装ラインのコンベアを流れるワークを撮影し画像データをサーバに送信②サーバにてワークを判定し、塗装現場へ結果をフィードバック③ワークに対応したプログラムを起動し、ロボットがワークを塗装するといった流れ。

検証結果は①サーバへの画像送信は0.11秒②サーバでの画像判定は0.3秒③サーバから判定結果送信は0.001秒以下となり、エッジコンピューティング環境での合計処理時間はわずか0.5秒以下であった。実際に塗装ラインで使用するときの処理時間としても問題ないと見られ、ヒバラコーポレーションは「ロボット遠隔塗装ソリューション構築に適する」と結論付けた。

画像による品質検査も見据える

国内は労働力人口減少の進行により、工業塗装の現場では人材不足と技術継承の問題は深刻化している。その対策としてロボットによる塗装の自動化は重要な1つの課題となっている。

同社が見据える次世代の塗装工場とは、コンベアで流れるワークを自動認識し、そのデータをロボットに送信し、ワークに合わせた最適な塗装を自動で行う。それもエッジコンピューティングという環境であれば、データの処理スピードやセキュリティの面でも信頼性が高まる。

現状、ロボットによる塗装ではワークごとのティーチングが必要であり、少量多品種を塗装する塗装専業者において導入現場は少ない。AIによる自動塗装技術が確立できれば、ロボットの普及は期待できるだろう。

同社は今回得られた知見からエッジコンピューティングを活用したロボット遠隔塗装技術の提供に向けて更なる検証を進める意向を示す。

小田倉社長は「ロボットプログラムのデータベース構築、新たに着手したAI画像認識による塗装面の品質検査などのエッジコンピューティング上での実現など、工業塗装分野における人手不足や技術継承などの諸課題の解決と持続的成長に向けて貢献していく」と展望を語った。



実証実験の構成イメージ
実証実験の構成イメージ

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