塗着効率85%、高塗着塗装機を開発

久保井塗装(所在地:埼玉県狭山市、代表取締役・窪井要氏)は、プラスチック部品の塗装技術を高度化し、塗装機器、塗料、塗装ロボットシステムを開発することで塗着効率85%以上を実現した。従来の塗装では40~50%程度までだった塗着効率を大幅に向上させることで、環境に配慮した塗装技術の確立を目指す。


この研究開発は経済産業省の令和4年度「成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業)」補助金を受け、東京都立大学、明治機械製作所、武蔵塗料と共同で行った。補助金額は3年間合計で約1億円。

久保井塗装では自動車部品のプラスチック塗装をメインに事業を展開しており、塗装品のサイズは5cm~10cm角の小物が多い。その中で「塗着効率をどれだけ上げられるかを常に考えていた」と窪井社長。

工業分野のプラスチック塗装では塗膜の仕上がり品質や作業性により、塗料を微粒化して塗布するスプレー塗装、中でもエア霧化方式が多く採用されている。エア霧化方式とは塗料を霧化するために、高圧の圧縮空気を塗装ガンのノズル先から塗料とともに吐出する塗装法。

外観レベルの高い塗膜を形成できるメリットがある一方で、霧化のために高い圧力や風量の多いエアを使用するため、被塗物にあたり塗料ミストの飛散が多く、結果として塗着効率に課題があった。

久保井塗装が開発した超高塗着塗装技術はエア霧化スプレーガンによる塗装であり、ガン先端のノズルに特殊形状を施し、ガン内部のニードル(塗料の止出制御の役目)のオンオフ反応の精度を高めるなどの工夫を行った。その結果、低圧かつエア流量を抑えても塗料を霧化することに成功。被塗物とのガン距離は一般的には200mmに対し開発塗装機では50mmの近接塗装を可能にしている。対象被塗物は10cm~5cm以下の小物品をメインとしており、メタリック塗装やマット塗装など膜厚管理が重要な塗装にも適している。

エアを出す圧力や流量が抑えられるため省エネにつながり、塗着効率が高いため塗装ブースの給排気も抑えることが可能。塗装ブースのコンパクト化にも寄与し、環境に配慮した塗装が可能となる。

開発した超高塗着塗装技術は日本国内をはじめ各国での特許取得を目指している。同技術をシステムとして2025年末をめどに実用化モデルを完成させて市場展開を行う予定。久保井塗装では来年夏に完成予定の新工場で実装する計画にある。



膜厚分布の例、膜厚管理の精度に優れる
膜厚分布の例、膜厚管理の精度に優れる
久保井塗装
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