家づくりを楽しむ「未完成住宅」
ペイントの手づくり感がマッチ

「未完成住宅」という斬新なコンセプトの住宅が販売され始めた。文字通り未完成の住宅。未完成だから残りは住まい手自身が家づくりを進めなければならない。その余白に住まい手の思いが詰め込まれ、完成時の満足度は100%を超える。その余白はまた、インテリアペイントが活躍できる大きなステージでもある。


先月(1月)20日・21日の両日、住友林業が一棟丸ごとリノベーションを行って販売している分譲マンション「フォレスティア東園田」(兵庫県尼崎市)で、「未完成住宅」のオープンハウスが行われた。

「当フォレスティア東園田は、賃貸マンションを一棟丸ごと当社が購入し、退去があった住戸をフルリノベーションして分譲しているマンション。そのうちの一戸を今回、ナインさんとのコラボで『未完成住宅』というコンセプトの商品を販売することにしました」(同社・住宅事業本部リノベーション営業部・関口祐輔シニアマネージャー)と説明する。

『未完成住宅』を仕掛けているのはデザインオフィス9(ナイン)のCEO・久田カズオ氏。実際に貸し出す団地(大阪府堺市の茶山台団地)の住戸を、日本で初めて素人参加形のDIYワークショップでフルリノベーションしたプロジェクト「DIY R SCHOOL 」の校長でもある。

「近年のDIYブームは、自分らしい住まいづくりへの人々の欲求が現れていることが背景にあると思います。これまでの住宅のような画一的ではない自分らしい空間への憧れ。DIYで、もしくは専門の施工屋さんに依頼して自分や家族の好みを反映した居心地のいいカスタマイズされた空間をつくる。その余白として、あえて未完成な部分を残した住宅」(久田氏)というのが未完成住宅のコンセプトだ。

久田氏は全国のさまざまなディベロッパーやビルダーと「未完成住宅」のプロジェクトを推進している。「例えば、主要な地域に専用のステーションを設け、そこにDIYの材料や商品を置き、ワークショップでDIYスキルも教える構想を暖めています。また、DIYをできない人と作業を提供できる職人さんを引き合わせるマッチングサイト『DIY Deli』も既に運営を始めており、未完成住宅を楽しむための準備を進めています」と新しい住宅取得のスタイルが生まれ始めている。

「現在、住宅の市場規模が約10兆円と言われていますが、もし100人に1人『未完成住宅』のようなスタイルを望む人がいるとすれば、約1,000億円の市場規模になります。それくらいの潜在需要があるのではないかと見ています」(久田氏)と住宅に対する価値観の変化が、新たな市場を形成していると指摘する。

未完成住宅にはペイント

さて、「フォレスティア東園田」では「リノベーション住宅を主に販売する中で『未完成住宅』も通常の住宅同様にご案内しています。ご入居後に更に暮らしを豊かにする。すなわち100%を120%に200%に満足感が得られる住宅として販売しています」(住友林業・関口氏)。

「満足感の余地、すなわち未完成にすることで、自分らしいスタイルで仕上げを楽しめる方には価値を見出すのではないでしょうか」と久田氏。そして壁の仕上げに関しては「たぶんほとんどのお客さんがクロスではなく、ペイントを選択されると思う」(久田氏)とコメントする。

既に完成している製品の壁クロス(壁紙)に対して半製品のペイントは、完成(塗膜)するまでに自分の手を入れなければならない。この手づくりのプロセスが未完成住宅のコンセプトと親和性が高い。未完成住宅を楽しむ人の感性にはペイントがとてもマッチしているのだ。いわば未完成住宅の潜在需要=ペイントファンの潜在需要との見方もあながち的外れではない。

今回の「フォレスティア東園田」の未完成住宅のオープンハウスイベントでは、日本ペイントホールディングスの内装塗料ブランド「ROOMBLOOM」のチームがペイントワークショップでコラボレーション。見学に来た人たちにペイントの楽しさを伝えていた。



パテ処理までは終えている石膏ボードむき出しの壁
パテ処理までは終えている石膏ボードむき出しの壁
パテ処理までは終えている石膏ボードむき出しの壁
パテ処理までは終えている石膏ボードむき出しの壁
住友林業・関口祐輔氏(左)とナインの久田カズオ氏
住友林業・関口祐輔氏(左)とナインの久田カズオ氏

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