主婦大家さん、ペイントにはまる
ペイントは賃貸住宅の救世主

内装ペイントの需要づくりで着目したいのが賃貸住宅だ。賃貸では居住者の退去に伴う原状回復が必ず行われるが、物件のオーナー自身で原状回復を行うアクティブ派が近年増えている。そんな1人、"パート主婦大家・なっちー"さんこと、舛添菜穂子さんはペイントの大ファン。「カラーリング、手づくり感、暖かみが人を寄せつけます」と、入居率へのペイント効果を実感しているからだ。


舛添さんを紹介してくれたのは原島塗装店(さいたま市)代表の原島信一氏。日本ペイントのセミナーの講師を務めていたことなどで業界でも知られているが、本業の塗装業の傍らで賃貸物件のオーナーに向け内装塗装の啓発活動も行っている。

「ある伝手で賃貸物件のオーナーさんのネットワーク、特にDIYで原状回復している方々のグループと知り合う機会があり、いつの間にか塗装のことを教えるコーチ的な立場になっていました。ビジネスというよりも塗料・塗装のファンづくり、内装塗料の需要づくりの小さな糸口になればというボランティア的な気持ち。そこでの人脈、人間関係がいつか仕事につながればいいくらいのスタンスです」とカジュアルな向き合い方だ。

その原島氏の塗装ワークショップに参加して「ますます塗装にのめりこんでいます」というのが舛添さんだ。「私が所有している物件はいずれも、築30~60年の古い物件なのですが、レトロゆえに却ってペイントの良さが出るというか、味わいみたいなものがあって。土壁をペイントで仕上げる方法や畳をリペイントする方法などを教わり、ペイントリノベのバリエーションが増えています」と明るい表情で話す。

古さをレトロに、ペイントマジック

舛添さんはOL時代に「コツコツと貯めた300万円」を元手に不動産投資を始めた主婦大家さん。現在、千葉県と都内、大阪府に戸建てや区分マンション、団地の住戸などの物件を所有している。「先日まで12戸所有していましたが、そのうち3戸を売却して現在は9戸を賃貸住宅として貸し出し、月々の家賃収入を得ています。先ほども申しましたように私の物件の特徴は古くて、そして駅からも距離があるという不利な物件ばかり。もちろんそうした物件は安く購入できるからというのが理由ですが、それをいかに客付けし、効率よく運用できるかが腕の見せどころ」と舛添さん。その勘所をたずねたところ「努力のみです!(笑)」と即答。

チラシを自作してポスティングを行ったり、地域の仲介業者に頻繁に顔を出して状況をたずねたり、単身よりも居住年数の長いファミリータイプの物件所有を優先したりと地道な努力を続けている。「私は主婦ですから、無理をせずお金をかけず主婦の立場でできる不動産投資を実践しています」とスタンスは明瞭だ。

原状回復にしても業者に依頼すればそれなりの費用がかかることから「自分でできる範囲はDIYで」を基本にしている。「当初は費用を抑えるためにという目的でしたが、最近では楽しみながらできるようになってきました。特にペイントは色やデザイン、さまざまな素材への応用などポテンシャルを強く感じています」と期待を寄せている。

先日、「高齢のご夫婦にご購入いただいた」という古い団地の住戸もペイントが効果を発揮した事例だ。「元々内装は吹付塗装がなされていたのですが、そこをホワイトに近いモノトーンで塗り替えました。そのお部屋が団地っぽくない、デザイナーズ風の明るいお部屋に仕上がったので、ご夫婦や娘さんが内見で即座に気に入り購入していただきました。ビニールクロスのようなありきたりな団地空間ではなく、心が華やぐような明るい雰囲気が気に入られたのだと思います」と舛添さん。

他にも「和モダン」をテーマに内装を塗り替えた物件は和室の壁の柱と長押で区切られたスペースを「枯茶色」と「グレージュ」という色で市松状に塗り分けた。「単に古いだけの和室でも色を使って、少しデザインを工夫することできちんとした主張を持った、人の心に響く部屋に生まれ変わります。古さをレトロという味わいに変える、まさにペイントマジックといったところでしょうか」とその魅力にすっかりはまっているようだ。

原島氏は「大家さんが自ら原状回復を手掛けることでその物件への愛着というか、思い入れが強くなる。そうした思いは、目に見えなくても入居者の方に届くと思うのです。そうした共感ベースのつながりがこれからの賃貸住宅のキーになるかもしれませんね。その心をつなぐ重要な小道具がペイントなのでは」と話し、内装で塗料が普及するポテンシャルを指摘した。



舛添菜穂子さん(左)と原島信一氏
舛添菜穂子さん(左)と原島信一氏
この古い土壁が(Before)
この古い土壁が(Before)
デザインウオールに生まれ変わった(after)
デザインウオールに生まれ変わった(after)

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