各種規格への対応強化、 金属溶射+塗装工法確立

関西ペイントは構造物の維持メンテナンスシステムを整備している。社会インフラの維持管理に社会的な関心が集まる中、高速道路会社などの発注者では品質規格の見直しの動きが見られ、同社では規格に対応したシステムの開発を進めている。


コンクリート構造物の補修に対しては、KCガードシリーズと称し、表面被覆や剥落防止に対応できる工法を準備している。既に鋼道路橋防食便覧(日本道路協会)のコンクリートへの塗装の品質規格を満足する「KCガード コンクリート保護工法」を始めとして、首都高速道路会社の表面被覆(AS-7)や剥離防止(A種、B種)などの認証を取得。

「KCガード コンクリート保護工法」について、以前はコンクリート用塗料を「カンペKCシステム」として上市していたが、平成26年3月に鋼道路橋防食便覧が改訂されたことにより、新たに「KCガードシリーズ」の「コンクリート保護工法」として製品ラインアップを整備した。製品すべてが非劇物タイプとして改良されている。

鋼道路橋防食便覧の塗装仕様(CC-A、CC-B)に対応しており、上塗り塗料は低汚染タイプの塗料のため汚れを洗浄する機能を有する。CC-A工法の上塗りには落書き防止用塗料「ケセルクリーン」の塗装も可能になっている。

現在、一部の道路会社で基準書の改訂作業が進められている状況にあるが、「今後も新たな規格を満足する工法を開発して市場展開を図っていく」との意向を示す。

現在、同社がコンクリート構造物向けと並んで注力しているのが、金属溶射への対応だ。

市場動向について、「近年、鋼橋の構造上、腐食環境の厳しい桁端部や将来的に塗り替えが困難な跨線橋などを対象として、更なる耐久性の向上を目的に金属溶射+塗装による工法が適用されるケースが増えてきている」として新たな製品展開をスタート。

金属溶射+塗装の場合、金属溶射された皮膜はピンホールが生じやすいため封孔処理を適切に施す必要がある。封孔処理後には、下/中/上塗、あるいは中/上塗を施し意匠性を付与する塗装仕上げの工法が求められている。

昨年、変性エポキシ樹脂系の金属溶射面用封孔処理剤「テクト溶射シーラー」の販売を開始、着々と実績を積み重ねている。溶射皮膜への浸透性や耐溶剤性に優れるなどの特長を有し、確実な封孔処理を行う。

金属溶射+塗装工法の性能を確実なものにするため、同社では防食溶射協同組合の協力を受けながらさまざまな促進腐食試験や海浜地区での屋外暴露試験を実施。金属溶射面への塗装システムで長期防食性能を維持できる塗装工法を確認してきた。

昨年8月、高速道路会社のNEXCOは設計要領を改訂し、金属溶射+塗装(ふっ素樹脂系)を規格化した。桁端部など防食性能を向上させたい箇所には金属溶射+塗装仕上げが採用されるケースが増えてくることが予想されている。

同社では各種試験データをもとに金属溶射+塗装工法の提案を積極化させていく。

また、今後の構造物塗装における環境対応や火災事故に対する安全性を考慮した重防食塗装システムとして「水性テクトシステム」を展開する。特徴として、上塗り(ふっ素樹脂系、ポリウレタン樹脂系)は独自の架橋技術を用いた1液反応硬化形で設計した。1液タイプのため塗料可使時間の制約がなく作業性に優れる。

促進耐候性試験では従来の弱溶剤タイプと同等以上の結果を示すなど性能面でも優れている。

その他にも構造物向けとして機能性防食塗料の開発を進める。省工程に寄与するシリコン変性エポキシ樹脂下上兼用塗料「ユニテクト30SF」、送電鉄塔塗替え塗装工事の工期短縮化に寄与する送電鉄塔用厚膜形1回塗り塗料「タワーテクト」を上市する他、湿潤面の塗装も可能で、被塗面が乾くまでの待ち時間を短縮できる湿潤面用エポキシ下塗り塗料「テクトバリヤーHP」、錆残存面でも塗装可能で、塗装工事費用の大きなウエイトを占める素地調整費用を低減できる錆面用水性エポキシ下塗り塗料「水性エスコCCS」などを開発、本格展開を予定している。

主な実績
KCガード
○福島県・会津若松管内橋梁補修工事(200㎡、2016年)
○福島県・公共災害復旧工事(橋梁上部)(120㎡、2016年)
○山形県・吉野橋下部工工事(100㎡、2016年)
テクト溶射シーラー
○福岡県古賀市・浜大塚線鋼3径間(1,960㎡、2016年)
○中国地方整備局・浜田港福井地区臨港(1,427㎡、2016年)
水性テクトシステム関連
○首都高速道路神奈川管理局・塗装改修工事(1万7,000㎡、2016年)
○首都高速道路東京西局・構造物改良工事(800㎡、2016年)
その他の大型鋼構造物
○JR西日本・北陸新幹線白山総合車両基地建築物(30万㎡、2012年)
○JR北海道・北海道新幹線函館総合車両基地(20万㎡、2013年)

関西ペイントのWEBリンク


プロフィール

企業プロフィール  関西ペイントは1918年に創業以来、各種塗料の分野において、日本の塗料メーカーのトップ企業として成長し、今日ではグローバルなペイントメーカーの地位を確保している。国内の売上高は全体の約半分で、その他はアジア、インド、アフリカでの売上を伸ばすなどグローバル化を強化する。事業分野は自動車用塗料、建築用塗料、船舶・鉄構用塗料、工業用塗料、自動車補修用塗料、家庭用塗料を持つ総合塗料メーカー。重防食塗料では橋梁向けでは環境に配慮した水性システム、送電鉄塔では省工程に寄与する厚膜タイプの展開に注力する。素地調整では、ブラスト処理面を形成できるハンディ動力工具を展開するなど、鋼構造物向けの塗装システムを強化している。


隅田川に架かる蔵前橋(東京都)
隅田川に架かる蔵前橋(東京都)

HOME建築物 / インフラ社会インフラ維持保全特集Ⅱケーススタディ各種規格への対応強化、 金属溶射+塗装工法確立

ページの先頭へもどる