今年9月に創業100周年を迎えた山本通産。「単なる記念行事で終えるのではなく、次の100年を歩むためのブランドを確立する契機にしたい」(石川会長)と社内でプロジェクトチームを発足、CI刷新に着手した。同社が目指すのは"色と光の専門商社"としての成長。顔料、染料、樹脂、添加剤、機器、ソフト、サービスを基点に新たな事業領域への挑戦が始まった。

----数年前から着々と100周年に向けて準備を進められてこられました。

「100周年でお祝いをして、記念品をお配りして終わりではもったいないと思いました。今の時代、モノの商売からコトの商売と言われています。当社も顔料だけではなく、分散剤や樹脂、測色機、分散機などトータルでソリューションを手がけていく動きをモジュール化と命名しマーケティングしているところですが、この100周年をひとつのブランディング戦略に活用したいと考えました。そのため100周年に相応しい会社、中身にしようということで2015年からプロジェクトチームを結成し、全社員で取り組んできました」 

----ブランドの核になるところは。

「創業者の山本作蔵氏は、奉公していた稲畑産業で扱っていた輸入染料を通じ、良いものであれば輸入品でも国産品でも売れるという哲学を学びました。それが当社の礎にもなっています。この精神を100年経った今、改めて大事にしていきたいと考えた矢先、松尾芭蕉の『不易を知らざれば基立ちがたく、流行を知らざれば風新たならず』との言葉に出合い、ブランド化の思いを後押ししてくれました」

----100年の歩みを実感することは難しいことですね。

「今回、ブランド化を推し進めたもう1つの理由にブランドコンサルティングの先生が話した『ブランドは人の振る舞いにある』との言葉が大きな契機となりました。たまたま創業100周年のときに会社に在籍する社員が、200周年の時にどんな会社の姿を期待するか。100年後の姿、希望を考えることが社員の問題意識の顕在化、仕事への活力につながると思いました。対外的なアピールもさることながら、ブランド化は社員全員が考える機会と100年続く会社にいることの自信が持てたと価値を感じています」

----これからの事業成長の方策についてお聞かせください。

「直近において、まず当社がやるべきことはグローバル展開です。21年前にタイに現地法人を設立して以降、現在アジアに9拠点ありますが、これを更に拡充していきます。また当社は長らく印刷インキ、塗料、プラスチックへの着色向けを主力に顔料専門商社として事業を行ってきましたが、自社のドメイン(事業領域)をこれからどう変化させるかを考えた時、コピーのトナーやインクジェットプリンター、あるいは液晶カラーフィルター分野は見逃せません」

「今や色に関わる様々なものが印刷のCMYから光のRGBにシフトしています。当社も既に"色と光の専門商社"として新分野での歩みを始めていますが、更に顔料は機能性材料としても活用領域を広げています。特に食や医療に関わるライフサイエンス分野は成長が期待される分野です」

----色の世界を広げていくということが基盤になるということですね。

「人類は発展すればするほどカラーを求めていくとの信念があります。その意味では色の可能性は無限大であり、不滅だと思っています」

報恩感謝の集いを開催 新ブランドコンセプトを発表

 9月3日、大阪帝国ホテルで行われた「創業100周年報恩感謝の集い」には、株主、OB、金融関係、顧問関係者など約70名が参集し、終始和やかな雰囲気の中で祝宴が執り行われた。
 小野社長は参列者にこれまでの協力に感謝の意を伝えた上で、新しく立ち上げたブランドコンセプトを披露した。経営理念となるブランドコンセプトは、下記の通り。
 ◇Vision:彩あふれる社会を創造する企業を目指す。
 ◇Value:ネットワークとチームワークで未来を動かす提案を世界に向けて発信する。社員の幸福感を高めることを約束する。
 ◇Personalityについては、100周年に相応しい振る舞いをytcカラーと称し、3つの行動指針を色で示した。
・ブライトトーン:革新を生む専門性
・ペールトーン:安心感を育む対応力
・ビビッドトーン:スピーディな行動力
 小野社長は「これからは新しいブランドコンセプトを基本に、単に顔料を売るのではなく、色を通じて世界中の人々を幸せにするビジネスを展開したいと思います」と更なる成長を誓った。