色彩セミナー2024 建築、鉄道車両の色彩を語る 

塗料塗装普及委員会(日塗工、日塗商、日塗装)は13日に色彩セミナーを開催した。今回は2023年のグッド・ペインティング・カラー新築部門最優秀賞受賞の下手氏と、人気テレビ番組「情熱大陸」でも取り上げられた川西氏の講演とあって、会場とオンラインを合わせて160名が受講した。


「病院を軸とした新しいまちづくり~まちなか集積医療と色彩計画~」
下手彰氏(大成建設)

25年にわたって病院設計に携わる下手氏が、北海道の「新さっぽろI街区」のメディカルエリアにおける医療施設を軸とした新しい街づくりについて講演した。

新さっぽろI街区は札幌市厚別区の延床面積約10万㎡の地区で、病院3棟、医療ビル、商業施設、立体駐車場、タワーマンションの8棟で構成されている。そのうち病院3棟と医療ビルが並んでいるメディカルエリアを大成建設が設計を担った。

色彩設計に関して、病室のある建物上層部に色を配し彩りある景観を作った一方で、下層部は人の動きがあるためガラスを用いて透明性を確保した。

外壁の窓と窓の間の部分を塗装することとし、「整形な長方形の構成要素に色付けすることでリズム感を出す。病院ごとに窓配置が異なり、それがリズムを変化させる」効果を持たせた。

その結果、色彩は病院の個性を引き出せることになり、下手氏は「病院の機能特性に色や素材を掛け合わせてシステマチックに個性を出す」ことを表現した。色調は札幌の景観色70色に合わせて選定し、4棟全体として調和を図った。

例えば、長期入院患者が多い病院では温かみのある配色で設計し、複数テナントが入る集客施設では賑わいや躍動感をカラーデザインで表現した。

また、実際に900角の大型サンプルにて現地確認を実施するとともに、実際の壁材に塗装し並べて最終確認を行った。

今回のプロジェクトを振り返り、下手氏は「病院の街づくりが、患者さんのためだけでなく新しく作る街づくりのヒントになったのではないかと考えている。その中で色彩の効果が調和においてうまく効いている」との見方を示した。

「領域を超えて~公共の未来とデザインの可能性~」
川西康之氏(イチバンセン)

鉄道デザイナーとして著名な川西氏は鉄道分野が斜陽産業にあると指摘する。川西氏は「鉄道は大量輸送を前提にしています。鉄のレールの上を鉄の車輪で走るため、少ないエネルギーでたくさんの人を運ぶことができる特長があります。しかし、人口が減り、その前提が崩れてしまっている。バスも同様です。数字だけの話で言えば、公共の移動手段は今本当に危機にあります」と現状を述べる。

その一方で、デザインとは数字では推し量れない世界があるとし、「デザインとは、色彩に関しても、数字では推し量れない色気の世界を作る仕事でもあります。色気というのは『あっいいな』という夢や憧れで、その魅力を作る必要がある」とデザインの役割を説明。続けて、フランス国鉄(SNCF)でも働いた経験を持つ川西氏がフランスの鉄道や都市開発について解説した。

また、鉄道車両の塗装について「昔は鉄道もバスもすべて塗っていました。ところが最近はステンレスの車体にシールを貼るパターンが多いです。これは塗装の手間を省いて人件費を省くという理由が多いそうです」と指摘する。

続けて、「ただ、観光列車、新幹線もそうですが、塗装をすることが多い。塗装することで高級感を出す、ここにしかない色を作る、 アイデンティティを塗り込むということから塗装を選択される場合が多いです」と塗装の重要性を述べる。

川西氏がデザインを担った、新潟県上越地方を走るリゾート列車「雪月花」のカラーデザインは「銀朱色」と名付けられた色で仕上げた。この地域の四季に映えるカラーデザインだ。

川西氏は「シルバーの朱色で銀朱色と名付けました。色を分かりやすく呼称することは大事。なぜならば、この観光列車が背負っている役目は、上越妙高地域をPRすること、金沢に負けない魅力があるんだということ。すなわちより多くの地域の皆さん、利用者の方にこの色は銀朱色と知ってもらう必要がある」とし、典型的な日本の風景の中を走る鉄道に合うカラーデザインとした。

最後にデザインへの向き合い方として、川西氏は「いろんな方に公共の空間に参加していただいて、私ごとにする、これがよく言われている持続可能性につながると思います。我々の仕事は手間ばかりかかるんですが、それをやるしか未来はないのかなと思って日々やっております」と述べ、"デザインの私ごと化"の訴求を図っていく。



下手彰氏(大成建設).JPG
下手彰氏(大成建設).JPG
川西康之氏(イチバンセン).JPG
川西康之氏(イチバンセン).JPG
会場とオンラインで160名が受講.JPG
会場とオンラインで160名が受講.JPG

HOME色彩セミナー2024 建築、鉄道車両の色彩を語る 

ページの先頭へもどる