来年1月、田中氏が会長兼社長CEOに就任
東京事業所にグローバル本社設立へ

日本ペイントホールディングスは9月20日、2020年3月下旬の定時株主総会での承認を前提に監査役会設置会社から指名委員会等設置会社へ移行するとともに、来年1月1日付で代表取締役会長の田中正明氏が代表取締役会長兼社長CEOに就任する人事を発表した。現代表取締役社長兼CEOの田堂哲志氏は取締役に就任する。同日16時に大阪市内で行われた会見には田堂社長と田中会長が出席し、経緯と抱負について述べた。


冒頭に田堂氏は、2014年のウットラムとの戦略的事業提携に基づくNIPSEAの連結子会社化、国内事業会社分社化(2015年)以降実施したドイツ・BOLLIG&KEMPER、中国・CRF、米・DUNN-EDWARDS、トルコ・BETEK、豪・DULUXの買収に至るグローバル展開の経緯を報告。「売上規模は2020年度に8,500億円となり、従業員数も2013年の5,755人から2万5,000人を超える。事業拠点も25カ国を数え、グローバル企業と呼ぶに相応しい体制ができつつある」と2015年に前社長の酒井健二氏(故人)から社長を引き継いだ5年の過程を振り返った。

その上で今回の退任の決断について「本来であれば、2020年度を最終年度とする現中計をまっとうする考え方もある。しかし、これからは真のグローバル企業になるために非常に重要なステージを迎える。経営基盤及びガバナンス強化に向けた機関設計を加速していく上で、今の(交代の)タイミングがベストと考えた」と説明。7月に社外取締役で構成する指名諮問委員会で田中氏の適任を申し出たという。

これを受け田中会長は、「大変な重責を担うことになったが、会長に就任してからの6カ月間、会社の歴史を勉強し、国内外の工場や現場の方々を訪ね、非常に良いカルチャーを持っている会社であることを理解した。当社をグローバル企業として持続的に成長させるために渾身の力を尽くしていきたい」と述べた。

田中氏がまず強調したのは、日本ペイントの事業再編以降の成長スピード。「2013年と2019年を比較すると、売上は2.7倍、営業利益2.5倍に伸長。特にすごいのは株価で、当時938円が今は5,400円に伸び、時価総額は6.6倍になった。時価総額ベースでは日本企業の75位から80位のポジションに位置し、これだけの期間で財務的に企業価値を高めた会社を見たことがない」とNIPSEAとの連携を決断した故酒井氏の決断と引き継いだ田堂氏の手腕を高く評価した。

国内、外資の金融企業を渡り歩き、現在も金融庁の参与を務める同氏に期待されるのは、豊富な海外経験と経営実行力。「日本にいるだけでは、海外における仕事の方法や本当の課題を理解することが難しい。どうしても感性が異なるため、言葉だけでは通じないところがある。そのためには、本社と海外拠点トップとのコミュニケーションをより緊密にすることが重要。その意味では、日本ペイントグループのCEOは、海外拠点企業のCEOを統括するCEOの立ち位置にあり、そうした視点がないとグローバル企業としてどこかで綻びが出てくる」との見方を示した。

田中氏が成長モデルに描くのは、"蜘蛛の巣型経営"によるグローバル企業の姿。「グローバル企業には、放射線型の経営と蜘蛛の巣型の経営があると考えている。多くの企業は、本社がすべての意思決定をする放射線型の経営を実践しているが、当社は強力なパートナーであるNIPSEAが元々グローバルの発想を持っており、蜘蛛の巣型にある会社」とコメント。一連の買収策で指摘を受けるグループシナジーについても「DULUXとNIPSEA、DULUXとDUNN-EDWARDSで連携が生まれることも構わないと考えている。今後はそうしたことが実現できるような仕組みを経営の中に取り込んでいきたい」と各拠点の独立性を生かした経営体制に取り組む姿勢を打ち出した。

その上で同氏は、ワールドヘッドクォーターを東京・品川にある東京事業所に配備する計画を発表。既にプロジェクトを開始しており、2、3年後に設立する予定。また国内拠点に関しても大阪の本社をそのままに東京本社を設立する意向を示した。

課題となる国内事業については、「生産性を更に高め、サプライチェーンを大きく変化させようとしている」とした上で、「当社には国内拠点3,000人の内、1,000人の技術者がいる。技術を活路に生み出せる需要はある」と今後も塗料専業を基点とした成長に意欲を示した。

一方、この日、来年3月下旬に開催予定の定時株主総会での承認を前提に監査役設置会社から指名委員会等設置会社へ移行する方針を発表。経営監督と執行の分離を明確にし、執行部門の意思決定を迅速化することが目的。社外取締役が過半数を占める監査委員会を設置し、グローバル監査体制の強化につなげる狙いがある。そのため田堂氏の今後の人事を含めた執行体制については、改めて発表するとしている。



会見に立つ田中会長(右)と田堂社長(左)
会見に立つ田中会長(右)と田堂社長(左)

HOMENew Trend来年1月、田中氏が会長兼社長CEOに就任

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