変異株の不活化を確認、東京大学との共同研究で実証

日本ペイントホールディングスは東京大学との共同研究において、可視光応答形光触媒を使った抗ウイルス・抗菌製品「PROTECTON」の新型コロナウイルス及び変異株に対する不活化効果を確認したと発表した。変異株を含む新型コロナウイルスの不活化が確認されたのは国内で初めてとなる。また、両者は共同で、新型コロナウイルス感染症の感染リスクを低減する抗ウイルス性ナノ光触媒を新たに開発した。どちらも昨年5月18日に締結した産学協創協定に基づく共同研究の一環によるもの。


日本ペイントHDと東京大学は産学協創協定を2020年5月18日に締結。具体的活動として設置された社会連携講座「革新的コーティング技術の創生」の共同研究を推進している。この社会連携講座は、2020年10月1日~2025 年9月30日までの5年間、日本ペイントHDによる11億円の経費負担で行われている。

共同研究としては社会が抱える問題解決を目指し、①抗菌・抗ウイルス機能を有し、感染拡大防止を実現するコーティング技術の研究②将来予測されるスマート/リモート社会の基盤を支え、社会の効率性向上に貢献するコーティング技術の研究③環境負荷低減/社会コスト抑制に貢献するコーティング技術の研究の3つに取り組んでいる。

今回の発表は共同研究テーマの1つにおいて「ポストコロナ社会」を見据えた研究となる。

「PROTECTON」5製品で変異株含む新型コロナの不活化を確認

実験において、未塗装ガラス表面に接触させた場合と比較したところ、同社の可視光応答形光触媒を使った抗ウイルス・抗菌製品のPROTECTON(インテリアウォールVK-500、インテリアペイントプレミアム、インテリアウォールVK-200、インテリアウォールVK-200・DIY用、バリアックスTM スプレー)の塗膜表面に接触させた新型コロナウイルス(SARS-CoV-2:従来株)及び変異株(N501Y変異を含むイギリス型:アルファ株)に対する不活化効果があることを確認した。

東京大学の津本浩平特任教授と一戸 猛志准教授は「光触媒技術から推定されるメカニズムから、新型コロナウイルスのスパイクタンパク質の一部が変化した変異株に対しても、不活化効果は発現すると予想していましたが、そのことが本研究で実証されました。実環境での塗膜表面においても、この不活化効果が発現することは十分期待できると考えています。現在採られている基本的な感染症対策である手洗い、消毒、換気などに加えて、接触表面に対する抗ウイルス技術が、感染症リスク低減のための新たな手段となると確信しています」と述べた。

新規抗ウイルス性ナノ光触媒を開発

同社と東京大学は共同で新たな抗ウイルス性ナノ光触媒を開発した。壁面、家具、ドアノブ、手すり、電子機器などを介する感染リスクを減らす塗料やスプレー剤への利用が想定される。

東京大学の橋本和仁名誉教授らが開発した酸化チタン-酸化銅複合型光触媒をベースに、光触媒粒子を極めて小さなナノ粒子とすることで、表面積、分散性、透明度を著しく改善している。

酸化チタン粒子を約30分の1のサイズ(4~8 nm)にまで小さくし、酸化銅のサイズも約5分の1(1~2 nm)にした。これにより、粒子の表面積と塗料中での分散性を著しく向上させている。表面積を大きくすることで光触媒としての化学反応が進みやすくなると考えられる。

加えて、従来の粒子サイズでは不透明な塗膜しかできなかったが、光の波長よりも極めて小さいナノ粒子を用いることで、透明度を高められるようになった。これにより、下地の色や模様、質感を生かせる塗料やスプレー剤とすることが可能となる。透明度の高いフィルムも形成でき、裏側から光を当てて表側で効果を得るという使い方も想定できる。

新たに開発した抗ウイルス性ナノ光触媒は、ウイルスを不活化する1価の銅を含み、これが空気により酸化されて効果の低い2価の銅になっても、光が当たれば1価に戻り効果を維持。この光触媒をエナメル塗料に加えて塗膜にした後、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)などに対する抗ウイルス効果を評価した。

その結果、光触媒含有エナメル塗装をしたガラス板に市販の蛍光灯下で3時間接触させたウイルスは、塗装のないガラス板の場合と比べ、感染可能なウイルス数がおよそ3千分の1~6万分の1にまで減少した。

実験ではこの新規ナノ光触媒を塗料に加えて塗った膜は、新型コロナウイルスやアルファ変異株に対し、蛍光灯下で顕著な不活化効果を示した。更にインフルエンザA 型ウイルス、ネコカリシウイルス(ノロウイルスのモデル)、細菌に感染するウイルスなども不活化した。

新型コロナウイルスの表面にあって人間の細胞に取り付く役割のスパイクタンパク質を変性させて、不活化していることも解明した。

インフルエンザウイルスなど種々のウイルスをも不活化するため、コロナ下のみならずポストコロナ社会でもウイルス感染リスクの低減が期待できるとの見方を示し、新規抗ウイルス性ナノ光触媒を活用した塗料化及び製品化を進めている。



新規抗ウイルス性ナノ光触媒が新型コロナウイルスを不活化する様子
新規抗ウイルス性ナノ光触媒が新型コロナウイルスを不活化する様子

HOMENew Trend変異株の不活化を確認、東京大学との共同研究で実証

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