需要開発へ、塗料技術のトレンド探る

「第4回コーティングジャパン(塗料・設備総合展)」(主催・RXジャパン)が12月8日から3日間、幕張メッセで開催され、初日から多くの来場者が駆けつけた。塗料・塗装機関連では、関西ペイント、大日本塗料、日本特殊塗料、イサム塗料、アクサルタ、ABB、IECらが出展。日本塗料工業会の共同ブースにはオリジン、水谷ペイント、久保孝ペイント、斎藤塗料が出展し、それぞれ独自製品・技術を披露した。


塗料・コーティングのトレンドとして目立ったのは、やはり抗菌・抗ウイルス製品だ。

漆喰塗料の新型コロナの不活化実証を弾みに、テープやシートなどの商材開発を積極化する関西ペイントは、12月1日に抗菌・抗ウイルス段ボール製パーテーション、トイレ、ベッドを発売。5年の品質保証を差別化に役所、企業に対しBCP対策、災害備蓄品としての提案を強める。また今年7月に新型コロナウイルスの不活化を実証した大日本塗料は、光触媒型室内用塗料「COZYPACK Air」、水谷ペイントは独自開発した光触媒型酸化チタンを採用した次世代型光触媒抗ウイルス塗料「ACコート」(来年4月発売)を出品。オリジンは工業製品向けにSIAA取得の抗菌・抗ウイルス塗料「プラネットPV」を紹介した。

その他にも、「ガラスコーティング剤」(ハドラスコーティング剤)、「光触媒コーティング」(日研工業所)、「抗ウイルス・抗菌コーティング剤」(信越化学工業)、「設備用防汚コート 抗菌性」(ソフト99)と多数の企業が関連製品を出品した。

いずれも新型コロナで高まった衛生ニーズを取り込む狙いだが、市場性に対する見方は、手応えと手探りで二分している。

ある塗料メーカーの担当者は、「新築の住宅内装でクロスに代わって塗装が選ばれるケースが増えており、その流れの中で抗ウイルス塗料の採用が増えている」と地場ビルダーの差別化に寄与している事例を紹介。その一方で、「元々内装における塗料需要が少ないため、我々だけが訴求しても需要を喚起することはできない」と業界全体の後押しを期待する声も聞かれた。

コーティング製品が単価や作業の手軽さから衛生ニーズにダイレクトに応えやすい一方、施工を伴う塗料の機能訴求は、塗装を前提とした中での塗料選びにとどまっている現状が垣間見られる。

ただ、クロスから塗装壁へのシフトが見られるように、塗装壁による空気感や質感が評価を高めている現状は、今後に期待感が高まる。抗菌・抗ウイルス塗料を普及させるためにも、塗装壁の魅力づくりと情報発信が不可欠と言えそうだ。

一方、その他の出品内容については、各社とも独自技術を訴求する動きが目立った。

大日本塗料は、工業用向けの高輝度金属調塗料ブランド「SUPER BRIGHT」の新製品となる「同 No.2000 MIRROR」を初披露。超薄膜の特殊蒸着アルミを使用した外装用金属調塗料で、鏡面並みの高輝度感を実現、自動車外装部品での採用に意欲を見せた。

日本特殊塗料は、超撥水技術を応用した電波減退対策塗料や滑水・防霜コーティング、超撥水コーティング技術を出品。基礎技術を訴求し、顧客との協業開発を積極化する姿勢を示した。

その他、久保孝ペイントは3.6kgから即日出荷に対応した粉体塗料サービスを紹介。イサム塗料は、トラック木製荷台の耐久性向上、廃材減少に寄与する大型車両木部用保護塗料「ウッドプロテクト」、斎藤塗料は、伸縮性、柔軟性に特化した特殊塗料「ウレヒーロー」、アクサルタはEV向けのコーティング材、オリジンは電波透過するめっき代替塗料などを紹介した。

化学大手は循環型モデルを提示

高機能素材WEEKとして併催されたセラミックス展や金属展、サステナブルマテリアル展から他素材業界の技術動向を探った。

セラミックス分野においては、航空機エンジン部材や原子力発電にCMC(セラミックス基複合材料)の導入を目指す動きが本格化している。

現在、エンジン部材には、ニッケル基超耐熱超合金(スーパーアロイ)がメインに使われているが、軽量かつ高強度、耐熱性(1,400℃レベル)を有するCMCであれば航空機の燃費向上に寄与する他、冷却装置などが不要になるという。既にアメリカの企業が先んじて旅客機への納入を始めているが、「CMCの補強に使うSIC繊維は日本独自の技術」(CMCセンター担当者)と国内企業の追随に期待を示した。

金属分野では、レアメタルなど金属を微粉末化した機能性材料による用途開発が鮮明。その一方で、日本製鉄は鮮やかな色彩を発現する意匠性チタンを出品した。

チタンはナノレベルの厚みの違いによって変色を繰り返すが、同社は任意の色にとどめる耐変色チタンを開発。2000年頃からデザイニングチタンとして市場展開を開始しており、素材から意匠材として領域を広げている。

今回、来場者の関心を集めたのが、新設のサステナブルマテリアル展。大手化学メーカーが軒並み出展する中、旭化成はバイオマスグレードの緩衝材やリサイクル樹脂を紹介。BASFはバイオマス原料やプラスチック廃棄物から基礎有機化学品を製造し、バイオマス製品、リサイクル製品に落とし込む次世代モデルを紹介。石化製品の循環システムの構築に未来像を示した。



会場全景
会場全景

HOMENew Trend需要開発へ、塗料技術のトレンド探る

ページの先頭へもどる