2022年は、人事労務に関する改正法の施行が相次いで予定されている。いずれも大手企業から中小零細企業へと範囲を広げているのが特徴で、事業基盤の抜本的な見直しが迫られそうだ。その他、健康安全、交通事故防止に関しても厳格化を強めている。企業経営、塗料・塗装関連から2022年に施行する新法令・制度の一部を抜粋しまとめた。

〈1月〉
●電子帳簿保存法改正(国税庁)

デジタル化・ペーパレス化の流れを受け、帳票保存に係る負担を軽減する。主に①電子帳票保存制度の導入に係る事前承認制度の廃止②優良な電子帳簿に係る過少申告加算税の軽減措置③最低限の要件を満たす電子帳簿における電磁的記録の保存等が可能となる。不正行為に対する罰則も強化する。

●フルハーネス型の装着を義務化(厚労省)

建設業等高所作業に使用する「安全帯」を「墜落制止用器具」に変更し、フルハーネス型器具の装着が原則義務化となる。合わせて安全衛生特別教育の受講が必要となる。猶予期間を終え、2日から完全施行した。高さ6.75m以下は胴ベルト型(1本つり)の使用が可能。

●瓦屋根の緊結方法を強化(国土省)

建築基準法の告示基準を改正し、新築の際は瓦屋根において強風対策を講じる必要がある。
緊結箇所は原則としてすべての瓦が対象。緊結法は、①軒・けらば(ねじ及び2本のくぎ)②むね(ねじ)③平部(くぎ等)。

〈4月〉
●育児・介護休業法改正(厚労省)

出産・育児等における労働者の離職を防ぐため、育児休業の枠組み創設(今年10月)に加え、育児休業を取得しやすい雇用環境の整備及び労働者に対する個別の周知・意向確認の措置を義務づける。10月からは男性の取得促進のため、出生後8週間以内に4週間まで育児休業の取得が可能。また最大2回まで分割して取得することができる。

●女性活躍推進法改正(厚労省)
常時雇用101人以上300人以下の企業に対して一般事業主行動計画の策定、届出と情報公表が義務化される。自社の女性活躍に関する状況について、求職者等が閲覧できるよう公表する必要がある。常時雇用労働者301人以上の事業主は、努力義務から義務に変わる。

●パワハラ防止法(厚労省)
改正労働施策総合推進法に伴い、4月から中小企業に対しても職場のパワーハラスメント防止措置が義務化される。事業主は、パワハラ防止に関する方針を明確化し、労働者に周知・啓発する他、相談窓口などの体制整備、事後対応のための迅速かつ適切な措置を講じる必要がある。

●白ナンバー事業者、飲酒検査義務化(警察庁)

改正道路交通法施行規則が改正し、4月から一定台数以上を使用する事業所は、安全運転管理者を選任し、酒気帯びの有無の他、運転前後の運転者の状態を目視確認することが義務となる。10月1日からはアルコール検知器を用いた酒気帯びの確認が必要となる。対象となるのは、乗車定員11人以上の白ナンバー車1台以上、または白ナンバー車5台以上を保持する事業所。

●アスベスト調査結果報告を義務化(環境省)

改正大気汚染防止法に伴い建築物等の石綿含有建材への規制が拡大する中、4月からは一定規模以上の工事を行う場合は、石綿の使用の有無に関わらず、事前調査結果を元請業者等が都道府県等に報告する必要がある。規模要件は、①建築物の解体:対象床面積の合計80㎡以上②建築物の改造・補修及び工作物の解体・改造・補修:請負金額の合計100万円以上。

●再生可能エネルギー「FIP制度」創設(経産省)

再エネ特措法の改正により、再生可能エネルギー発電事業者に対し、市場価格に一定のプレミアム(補助額)を交付するFIP制度が1日にスタートする。これまで固定価格で買い取るFIT制度が運用されてきたが、FIP制度を通じて発電事業者の投資インセンティブを確保しつつ、自立化と電力市場への統合を促す目的がある。

〈5月〉
●75歳以上、運転更新内容が変更(警察庁)

改正道路交通法に伴い、13日から75歳以上の免許更新の際、認知機能検査及び高齢者講習の内容が変更する。記憶力や判断力の検査を厳格化し、低いという判定結果が出た際は、高齢者3時間講習の受講が義務。認知症と判断された場合は、運転免許の取消等の行政処分の対象となる。認知症については、医師の診断書で代替することができる。

〈6月〉
●ドローン登録を義務化(国土省)

無人航空機(ドローン、ラジコン等)の利用急増による事故や無許可飛行の頻発を受け、6月以降、無人航空機の登録が必要となる。昨年12月から登録申請を開始しており、未登録の飛行は不可となる。

〈10月〉
●社会保険加入者の適用を拡大(厚労省)

10月から従業員101人以上の企業に対して、社会保険加入者の適用を拡大する。新たな加入対象者は、①週の所定労働時間20時間以上②月額賃金8.8万円以上(年収106万円以上)③2カ月を超える雇用見込みがある④学生でない。これらの要件をすべて満たしたパート・アルバイトは、社会保険の加入が義務となる。
2024年10月からは、従業員51人以上の企業へ範囲を拡大する。