旭化成は塗料用硬化剤として新たに多官能イソシアネートを開発した。塗料の硬化温度の低温化が図れることから、省エネルギー及びCO2排出量の削減に寄与するとして事業化を目指している。

ポリウレタン系塗料は主剤と硬化剤(イソシアネート)で硬化させ塗膜を形成する。一般的に自動車塗装、自動車補修塗装、プラスチック塗装、建築塗装、粉体塗装などのトップコートとして使用されている。

開発品はイソシアネートモノマーのまま使用する設計とし、分子量当たりのイソシアネート官能基割合を高く保持する。そのため高い反応性を発現することが可能となった。

また、既存製法の1つであるホスゲンを用いたイソシアネート製法では、反応制御が困難でさまざまな副反応が発生したり低収率であったりといった問題があった。

そこで同社では毒性の高いホスゲンの代替として安全性の高いCO2誘導体を原料とした独自の製法を確立した。この官能基変換技術により、多官能イソシアネートが得られるようになった。

同社では1つの提案として自動車塗装工程の省エネルギー化を想定する。自動車製造における消費エネルギーのうち塗装工程が占める割合は約3分の1とされ、省エネ化が求められている。

新たに開発した製法で得られた高活性・多官能イソシアネートを用いることで、自動車の塗膜に求められる物性を保持したまま、従来硬化温度として必要な140℃を80℃に低温化する塗装システムを提案する。

塗膜評価では、80℃硬化塗膜の平滑性及び硬度は従来品より優れるとともに、耐酸性や塗膜乾燥性、ポットライフは同等以上の物性を発現した。

同社では自動車塗装向けだけでなく、高反応性や低温硬化が求められる塗料向けの事業展開を目指す。既に一部塗料では塗料メーカーにサンプル案内を行っており、事業化に向けた製造技術開発を推進している。