初の1兆円超え、売上収益1兆3,000億円に

日本ペイントホールディングスの2022年12月期決算は、期初の予想を大きく上回り、売上収益1兆3,000億円と初めて1兆円の大台を超えた。営業利益も1,000億円を突破し、売上収益、営業利益とも過去最高を計上した。若月雄一郎共同社長は「強固なオーガニック(既存事業)の成長に加え、新規連結、価格・ミックスが寄与した」と製品値上げの浸透とマージン改善に手応えを示した。来期は、売上収益約1,000億円増の1兆4,000億円を狙う。


同社の2022年12月期連結業績(IFRS)は、売上収益1兆3,090億2,100万円(31.1%増)、営業利益1,118億8,200万円(27.7%増)、税引前利益1,044億9,500万円(20.9%増)、当期利益794億5,200万円(16.6%増)を計上。親会社の所有者に帰属する当期利益は、17.5%増の794億1,800万円となった。

2022年は、欧州塗料メーカーのCromology Holding SAS(1月)、DP JUB(5月)を子会社化。これに円安の影響や主力事業である中国における汎用塗料の継続的な値上げにより前期比約3,100億円の増収となり、連結効果、為替影響を除いた実質ベースは、約1,400億円の増収となった。連結営業利益は、原材料価格の上昇を受け、中国において貸倒引当金を追加計上したが、値上げにより約243億円の増益(実質16.1%増)となった。

地域別業績は以下の通り。
◇日本:売上収益1,861億円(6.9%増)、営業利益53億円(44.5%減)
◇Nipsea:売上収益7,085億円(24.0%増)、営業利益727億円(5.6%増)
◇Dulux Group:売上収益3,149億円(78.7%増)、営業利益297億円(55.8%増)
◇米州:売上収益995億円(30.3%増)、営業利益81億円(124.3%増)

全売上の34.4%を占めるNipsea中国(中国以外除く)は、自動車用が生産台数の反動増を受け、実質56億円の増収(14.6%増)。工業用は、全事業がコロナの影響を受け、45億円(実質17.7%減)の減少。汎用は、プロジェクト関連が軟調な不動産市場の影響を受け10%下落したが、DIY向けが値上げの浸透、3~6級都市の好調な販売により12%の増収となった。結果、中国事業の売上収益(実質ベース)は、161億円増(4.2%増)となった。

自動車用の回復基調が顕著な一方、汎用(DIY)分野は、豪州、米州とも巣ごもり特需からの反動減を値上げで下支えする構図。若月共同社長は、「市況は引き続き不透明であり、今期も全地域で値上げとシェアアップに注力していく」と方針を示した。

通期予想は、売上収益1兆4,000億円(7.0%増)、営業利益1,400億円(25.1%増)、税引前利益1,340億円(28.2%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益980億円(23.4%増)を見込む。年間配当金は2円増の13円を予定する。

国内事業は増収増益見込む

増収減益となった国内事業は、特別退職金、国内機能会社NPCS設立に伴う一過性費用を計上したとはいえ、実質ベースで増益を確保する海外事業との差が顕著になった。原材料価格の高騰に需要回復、価格転嫁が追いつかない状況が見られる。

事業別の売上収益は、自動車用:売上収益351億円(0.6%減)△汎用:478億円(5.4%増)△工業用:400億円(5.0%増)△ファインケミカル:86億円(2.9%増)△その他:545億円(16.4%増)。

自動車用は、自動車生産台数が下期以降に回復し、前期並みを確保。汎用は、製品値上げと販売プロモーションが奏功し増収。工業用は、コロナや市況の回復遅延の影響を受けつつ、価格転嫁を進め、増収につなげた。

一方、営業利益に関しては、昨年9月に実施した希望退職制度「ネクストキャリアプラン」に伴う特別退職金22億円、NPCS設立に伴う登録免許税5億円を計上し、営業利益率は前期比2.6ポイント減の2.8%。一過性要因を除いた実質ベースは、1.3ポイント減の4.2%となった。

最終的に271名が応募した「ネクストキャリアプラン」について、若月共同社長は「人員削減が目的ではなく、事業効率を高めることが目的」と改めて施策の意図を強調。その上で「特別退職金は、(応募対象の)人件費と同額相当にあり1年で回収できるものと考えている」と述べた。注目したいのは、営業利益率向上への見通しだ。

国内事業の四半期ごとの営業利益率(実質ベース)を見ると、第1Q・0.7%、第2Q・4.9%、第3Q・3.7%、第4Q・6.1%とNPCS関連費用を計上しつつ、販管費の抑制と値上げにより着実に改善基調をたどる。

今期は、売上ベースで自動車用+0~5%、汎用+5~10%、工業用+5~10%と全体で5%前後の成長を想定しており、営業利益率も上昇する見通し。時期や数値に関する具体的言及は避けたが「業態として10%は目指せるものと考えている」(若月共同社長)との見解を示した。

◇主力海外メーカー2022年12月期業績△シャーウィン・ウィリアムズ:連結売上高221億4,900万ドル(=約2兆9,500万円、前期比11.1%増)、税引前利益25億7,300万ドル(=約3,400億円、14,4%増)△PPG:売上高176億5,200万ドル(=約2兆3,500万円、5.1%増)、税引前利益13億8,100万ドル(=約1,800億円、23.9%減)△アクゾノーベル:売上高108億4,600万ユーロ(=約1兆5,500億円、13.1%増)、EBITDA10億7,600万ユーロ(=約1,500億円、26.8%減)。1ドル=133円、1ユーロ=143円で換算。



HOMENew Trend初の1兆円超え、売上収益1兆3,000億円に

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