断熱塗料「ガイナ」のベトナム事業始動

塗料商社大手のニシイ(本社・福岡市、西井一史社長)とプラスチック用塗料メーカーの武蔵塗料ホールディングス(同・東京都豊島区、福井裕美子社長)は、断熱塗料「ガイナ」のベトナムでの展開に着手した。同品の製造元・日進産業(同・東京都板橋区、石子達次郎社長)を交えた3社の協業体制が確立、ベトナムでの展開を本格化させる。建物の屋根・外壁に加え内装も狙えるガイナの優位性と、ニシイ及び武蔵塗料HDの現地の販売網、生産体制を強みに市場開拓を進める。


3社の協業でベトナムでのビジネスを本格化させる。現地に拠点を構えるニシイと武蔵塗料HDがそれぞれの販売ルートで「ガイナ」の拡販に乗り出す他、来年には武蔵塗料HDの現地工場で同品の生産も始める予定。日進産業は製品輸出、製造ノウハウの提供及び主原料の供給などで協力していく。

ニシイは台湾のパートナー企業・佳値貿易との間で2016年にベトナムに設立した合弁会社「PANEL VIETNAM」(海蔵寺明広CEO)を基点にガイナを展開する。現地に進出している日系の建設塗装会社などの協力を得て、ゼネコンルートの開拓や現地での施工技術指導、施工管理体制を整える。また、PANEL VIETNAMのオフィスを移転拡充し、ガイナの営業人員を新規に採用、設計活動や代理店網の構築など事業を加速させる。

一方、武蔵塗料HDは現地の取引先企業を基点にガイナを展開する。

同社はプラスチック用塗料のグローバルメーカーとして早くからベトナムに進出して現地法人を設立。自動車、家電、情報機器関連の顧客や原材料の仕入先など多くの取引先を持つ。こうした企業の工場や倉庫に対してガイナによる省エネ塗装(営繕)を提案して事業化を図るとともに、現地で築いたネットワークを活用、幅広いビジネスを探る。今年中に事業性を見極め、来年には現地での生産も始める予定だ。

ベトナムでのガイナの市場性についてニシイの西井博文専務は、「暑い地域なので屋根や外壁の遮熱塗料としての需要はもちろん、建物の内装に向けたポテンシャルも大きい」と説明する。

「高温多湿な環境下でエアコンをフル稼働させているので室内には大量に結露が発生。また、ハノイなど北部は暖房を要する日もあるほど冬季は冷え込むので暖かさも求められる。こうした気候条件に対して、結露防止や断熱などガイナの持つ多機能性がマッチ、外装よりもむしろ市場規模が大きい内装需要も狙える」と言及する。

武蔵塗料HDもベトナム市場の有望性ついて、「ニシイさんが指摘された気候的な条件に加え、近年の目覚ましい経済成長とそれに伴う所得や生活水準の向上で、高機能塗料が受け入れられる素地が整ってきた」(同社執行役員生産本部本部長・西並正氏)と判断、ガイナの展開に乗り出すことになった。

日進産業の断熱塗料「ガイナ」は、宇宙ロケットの断熱コーティング技術を応用した機能性塗料。特殊セラミックの働きにより、外壁に用いた際の遮熱機能だけでなく、室内では高い断熱効果を発揮、冷暖房の効率を高める。また、室内の温度に同調して壁との温度差をなくすため結露の発生を大幅に軽減、室内環境の改善機能がある。現地の気候条件にマッチし、屋根・外壁だけでなく内装もターゲットにし得るガイナの市場性に両社は期待する。

ベトナムに次ぎインドでも始動

今回の3社によるコラボレーションは、日進産業と武蔵塗料HDともに取引関係にあるニシイが中心的な役割を果たし、それぞれの思惑や方針が一致、協業体制の確立に至った。

ニシイは、同社のベトナムの合弁会社・PANEL VIETNAMの事業拡大を探る中で、日本特有の機能性塗料の販売に着目。「ベトナム市場にもインパクトのある商材」として「ガイナ」が浮上した。

一方、同品の海外展開に意欲を持つ日進産業は、ベトナムでの販売に関するニシイのオファーを歓迎、同地での販売ライセンスを供与した。

そこに、強力なカードとして加わったのが武蔵塗料HDだ。プラスチック用塗料が主体の同社は、分野は違えども現地でのビジネスに精通しておりコネクションも豊富。更に、同社の生産拠点でガイナの現地生産が実現すれば、コストや納期など市場での商品力が一気に高まる。

「2019年頃に(ニシイの)西井専務様が当社のホーチミンの拠点に来られたときに初めてガイナのお話を伺い、ぜひ一緒に進めていきましょうと早急に話がまとまりました。というのも、当社の社長の福井は、専門領域に固執せずもっと大きな視野でさまざまな企業との協創に取り組むことを是としています。加えて、"色と機能で世界を豊かにする"との当社のビジョンと『ガイナ』の各種機能や製品思想が合致。畑は違えども、協創できる部分が大きいのではないかとの判断で参画に至りました」(同社・西並氏)と経緯を説明。

以来、日進産業のガイナの製造工場の視察や3社によるオンライン協議などを綿密に重ね、コロナ禍が落ち着きだした今年から現地での活動が本格化することになった。

日進産業の取締役営業統括・松島道昌氏は、「地球環境問題に貢献する塗料としてガイナの海外展開を目指す中で、今回のコラボレーションは当社にとっても大きな転機になります。ニシイ様と武蔵塗料ホールディングス様による現地での営業活動、施工指導、施工管理体制が構築できることに加え、(武蔵塗料HDによる)現地生産が視野に入ったことでコストや納期の課題も大幅にクリア、海外展開の実効性が格段に高まる」とコメント、期待を示す。

日進産業と武蔵塗料HDの間では、ベトナムに加えインドでも協業の話を進めており、同じく来年あたりからの現地生産を予定。建築分野と工業分野といった異種メーカーの協業で、グローバルな視点での価値創出に挑む。



断熱塗料「ガイナ」
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各社オンラインで取材に対応。西並氏はマレーシアから参加してくれた。
各社オンラインで取材に対応。西並氏はマレーシアから参加してくれた。

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