塗料で彩られた車が街を颯爽と走る―。富田商店は3月、社内プロジェクトとしてマイカーセルフペイントを行い、社用車の軽バンに社員自らがベース色を塗装し、その上にアーティストがアートを施した。

目的は、地域企業における環境活動の発信。同社が参画する同業者グループ・エコペイントネットワークでは、以前より住宅塗り替え1件ごとに木を進呈する植樹活動を行っており、車に木々やペイントの楽しさを表現した絵を描くことで、環境意識の醸成に貢献したいとの期待がある。

今回アートを手掛けたのは、波乗り絵描人のKei Otsukaさん。自然やサーフィンをモチーフにした鮮やかな色使いと柔らかい画風を持ち味に、これまで企業や自治体などと数多くのコラボプロジェクトを展開。昨年の東京オリンピックでは、町の魅力を発信する大使役としてサーフィン会場となった千葉県一宮町のクリエイティブアンバサダーにも選ばれた。

車のペイントは過去にも経験はあるが、水性艶消し塗料は初めての経験。「ペイントアートは、色の乾きを左右する風が気温以上に大敵です。その点、水性塗料は水の希釈で乾燥時間が調整できるため非常に使いやすいと感じました」とコメント。刷毛と筆を巧みに使い、約1カ月かけて植樹アートカーを完成させた。1カ月間、同社のガソリンスタンドの一画で作業していたこともあり「はじめは様子見だった方が次第に声をかけてくれるようになりました」と地域住民との交流も生まれた。

また今回のプロジェクトは、環境活動をアピールする以外の目的も込めた。「事業属性の違いから普段は交流が少ない塗料事業部とスタンド事業部が融合するきっかけになると考えた」と富田浩正社長。植樹アートカーが双方の事業を表現するシンボル的役割を担っている。

なお同社は今後、オリジナルブランドとしてカーセルフペイント用塗料の販売を始める計画だという。