2021年度の国内塗料出荷(販売)は、数量ベースで対前年比2.2%増の159万5,550トン、金額ベースで5.8%増の6,579億6,000万円となった。新型コロナウイルスの影響で38年ぶりに150万トン台を記録した2020年度と比べると盛り返しを見せたが、コロナ前の2019年度(169万5,409トン)と比べると5.9%の減少。更に調達難や部品不足が加わり、需要回復への見通しを一層難しくしている。それでも品目別で見ると、好不調に違いが見られた。

金額については値上げ効果もあり、ほぼ全品目で前年を上回ったが、数量で伸長が目立ったのは、電気絶縁塗料(114.6%)、その他溶剤系(107.9%)、ラッカー(107.1%)、粉体塗料(106.2%)、厚膜型エマルション(105.1%)、エマルションペイント(104.9%)、ウレタン樹脂系(104.4%)。その他溶剤系、粉体塗料は、コロナ前の水準を上回った他、電気絶縁塗料は2年連続で販売量を伸ばした。

一方、昨年に続き需要を押し下げたのは、アルキド調合(89.7%)、エポキシ樹脂系(93.8%)、アクリル焼付(95.4%)、船底塗料(96.1%)、アルキドワニス・エナメル(96.8%)などの8品目。アルキドワニス・エナメル、アルキド調合は金額も前年を下回った。

月別の出荷量推移を見ると、4月から8月は前年同月を上回ったが、需要期の9月、10月で失速。12月から3月も前年ダウンとなった。

品目別では、エマルションペイントが1年通じて前年を上回った一方で、エポキシ樹脂系は全月で前年ダウン。自動車に関連するアクリル常乾、ウレタン樹脂系においては、4月から8月まで前年プラスで推移していたが、10月で突如前年ダウン。その後も前年割れが続き、半導体不足をはじめとする部品不足が塗料需要にも影響した。

更に日塗工の業種別動向観測アンケート(金額ベース)と照らし合わせると、建築、建築資材、自動車補修、機械・電気機械・金属製品は、1年を通じて販売金額が増加。自動車新車、木工製品は年度途中から失速した。特に家庭用においては、20年度の巣ごもり特需の反動を受け大きく下回った。22年度は各分野とも前年アップを見込むが、木工製品、家庭用においては引き続き低調を予測する。

また2021年度は、原材料の高騰を受け、メーカー各社が塗料価格の値上げに動いたこともあり、平均キロ単価は、3.5%増の412円となった。

月別の単価変動を見ると、5月、6月にかけて4%台の増加となったが、12月に入り5%増、2022年1月から3月までは6%台と一気に上昇しており、ばらつきを見せながらも今年に入って値上げの本格化がうかがえる。

品目別で単価上昇が大きかったのは、シンナー(110.2%)、エポキシ樹脂系(108.0%)、電気絶縁塗料(106.4%)、アクリル焼付、船底塗料(106.3%)、不飽和ポリエステル(104.6%)。シンナーを除いて最大の出荷数量を誇るエマルションペイントは102.3%となった。

新型コロナにおける市況の影響は緩和の方向を顕著にしつつも、世界情勢を取り巻くサプライチェーンの乱れが塗料需要の回復を遅らせる。更に原材料高騰や円安も加わり、当面は安定供給体制の確保と値上げ要請に注力していくと見られる。

20220622-7-1.jpg