過去最多1万6,000トンに迫る

高日射反射率塗料(遮熱塗料)の2021年度の全出荷量は、前年比15.6%増の1万5,953トンとなり、調査開始以来、最大の出荷量となった。増加に転じたのは2年ぶり。新型コロナウイルスに見舞われた2020年度は、前年比約10%減となったが、2021年度は建築塗料全体が持ち直したことで需要が回復。2020年度に下落した需要の反動を受けた一方、塗り替え市場の高付加価値化シフトが需要を後押ししたと見られる。


日本塗料工業会がまとめた高日射反射率塗料の2021年度出荷量の内訳は、建築用が18.4%増の1万5,591トンと過去最多。道路用は44.4%減の318トンと2年連続で減少した。

建築用は緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の影響を受けながらも、1年を通じて安定した需要を確保した。

日塗工が四半期ごとにまとめている業種別動向アンケートによると、建築塗料分野の前年同期金額比は、2021年度第1四半期+6.6、第2四半期+10.6、第3四半期+4.5、第4四半期+4.9とすべての期間で前年を上回り、建築塗料全体の回復が遮熱塗料を牽引した事が分かる。

改めて遮熱塗料の出荷推移をたどると、年率25.7%増と驚異的な伸びを示したのは2011年度。同年3月に発生した東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の事故で電力供給が激減。節電ムードの高まりを受け、遮熱塗料の出荷量は前年の8,355トンから約1万500トンと急増した。以降、省エネに寄与する塗料として工場屋根から戸建て屋根へ需要領域を拡大。自治体の助成金も後押しし、需要を伸ばした。

しかし、建築用においては調査開始以来続けていた伸長が2015年度に途絶える。その後は増減を繰り返しながら緩やかな伸びを示しているが、国の省エネ施策に対する具体的導入の動きも見られず、需要を後押しする外部要因は、次第に弱まっていった。

その一方で、建築用の停滞を下支えしたのが、道路用遮熱塗料の存在。ボリュームとしては建築用に比べてわずかにとどまるが、2020年東京オリンピック・パラリンピックのマラソンコースでの採用を受け、需要が増加。開催1年前の2019年度は、過去最多となる758トンを記録した。

最終的には、1年の延期と札幌に会場を移したことで本番を迎えることはなかったが、コロナ前の2019年度は初の1万5,000トン台を超えた。

しかし、道路用においては、2020年度24.5%減の572トン、2021年度44.4%減の318トンと2年連続の大幅減が続く。発注元となる国、自治体の積極採用なくしては、復調は難しい状況となっている。

需要拡大に期待高まる

今回の統計で興味深いのは、遮熱塗料が建築塗料を上回る伸びで成長性を示した点。コロナ前の2019年度以前は、微増微減を繰り返す踊り場の様相を見せただけに、再び成長軌道に乗るのか、業界関係者の関心が集まる。

伸長した要因としては、2020年度に抑えられた需要の反動と読み取るのが妥当だが、建築塗料全体に占める割合においても年々上昇しており、塗り替え市場において高付加価値提案を積極化する現場サイドの動きが、一般屋根用塗料から遮熱塗料への置換を推し進めたと想定される。

2022年度は、昨年以上に市況の回復ぶりを堅調にしており、需要を押し上げる公算が高まってきた。更に2020年10月に当時の菅義偉首相が掲げた「2050年カーボンニュートラル宣言」に端を発し、脱炭素化に向けた省エネルギー技術への関心が増大。更に電力費の高騰や計画停電の要請など、節電ムードが高まっている背景がある。

省エネ効果においては、「明確な効果を示しにくい」など、他の住設系設備と比べて効果の実証が難しい特性があるものの、動力を要しない省エネ技術としてのメリットも有しており、遮熱塗料の提案活動はより活発化していくことが予想される。

こうした状況に対し、日塗工は「各自治体で実施している助成事業の充実に期待したい。現在は、JIS K5675(屋根用高日射反射率塗料)を基準とする自治体が多いが、JIS K5603(塗膜の熱性能-熱流計測法による日射吸収率の求め方)への置き換えを提案していきたい」とコメント。より広範囲な製品の評価を可能にするJIS K5603の普及に意欲を示した。

20220713-1-1.jpg



20220713-1-1.jpg
20220713-1-1.jpg

HOME建築物 / インフラ過去最多1万6,000トンに迫る

ページの先頭へもどる