塗料販売業の巻き返し、「学び」に活路
新入社員研修会に見る学びの光景

塗料販売店の「学び」への気運が高まっている。東京塗料商業協同組合青年部会(東塗商青年部、海老名創会長)は3日、同会所属の社店に向けた新入社員研修会を初めて開催、募集後すぐに定員に達するなど関心の高さをうかがわせた。今年初頭に第1回目を実施し、盛況だった日本塗料商業組合の検定制度「塗料マイスター」と同じく、塗料販売店の学びの気運が高まっていることを印象付けた。直販メーカーの台頭など業界構造に変化が表れている中、製販装の一翼を担う塗料販売業界の巻き返しに注目が集まる。

 


東塗商青年部主催の新入社員研修会は3日午後、関西ペイント東京事業所で行われた。東塗商青年部所属の22社店に開催の案内を出したところすぐに定員の20名に達し、当日は加盟の9社店から定員を超える21名が参加。1年未満から3年目程度までの新入社員が中心で、参加21名のうち半数近い9名が女性の参加者であった。

青年部の海老名創会長は初めのあいさつで、「塗料販売店に従事する方々の専門性を高めるために創設された『塗料マイスター制度』が今年から始まりました。塗料販売店に従事する方々のブランディングが目的にあります。当青年部会としても、会に属する社店の人的資源の育成に力をいれようと思い、今回初めて新入社員研修会を開催しました。塗料は覚えることが多く一人前になるまで時間がかかります。その長い道のりの一歩になればと思い計画しました」と開催の趣旨を述べた。

研修会は、関西ペイント及び関西ペイント販売の社員が講師となり、「塗料の基礎講座」などの座学と、刷毛・ローラー・スプレー塗装の実技講習で構成。

座学では、樹脂や顔料、添加剤など塗料の成分とそれぞれの役割、下地や目的に合った塗料の選び方、色の決め方と注意点など塗料の基礎を学習。各種建築素材についても学んだ。

盛り上がりを見せたのは、やはり実技講習だ。刷毛及びローラー塗装では、錆止め、防水用下塗り、微弾性フィラーの各種塗料を大判の板で全員が体験。

スプレー塗装では、タイルガンによる吹付塗装で玉吹きを行い、押さえローラーによるヘッドカットも体験。本格的な塗装の実技講習となった。ほとんどの参加者はこれまでに塗装の経験がなく、「塗料販売の仕事をしていながら、塗料を触ったことがないことに何となく引け目を感じていました。今回、しっかりと塗装体験ができ、これまでのモヤモヤが晴れたような感じ」(女性参加者)と、塗料という商材への実感を持ちたいとの思いが伝わってきた。

若手ほど強い学びへの意欲

研修会全体で強い印象を受けたのは、参加者の前向きな姿だ。
入社してまだ日が浅いという営業職の男性は、「座学では難しいところもあるけれど、普段の仕事で中途半端に覚えている知識を再確認でき、腹落ちする部分も多い」とコメント。内勤で受発注業務に従事している2年目の女性は、「お客様との電話で分からない用語もよく出てくるけれど、こうした研修会で下地の種類や道具などを実際に見聞きすることでリアル感が湧き、もっとスムーズな受け応えができそう」と声を弾ませる。

配送部門から営業に転属したという男性は塗装の実技講習に関して、「自分たち営業も、こうして材料を触りローラーを転がしてみることで、お客さんへの共感を高めることができるし、営業に説得力が増しそうな気がする」と精力的に塗装講習を受けていた。「社長から研修会があることを聞き、自ら進んで応募しました」(女性)といったように、参加者に共通した印象は、塗料販売従事者として自信を持ちたいとの思いからくる「学び」への意欲だ。

今回の新入社員研修会を発案し、開催を進言した日本塗料商業組合青年部の森健夫会長は、「以前は、販売店の新入社員向けにメーカーさんの研修会が行われていましたが、それらが廃止され体系的に学べる機会が減っていました。日塗商の塗料マイスター制度が始まり、今日研修を受けた人たちがそこにもつながっていくでしょうし、東京を皮切りに他の地域にもこうした活動が広がり、塗料販売業界全体で学びの機会が増えればいい」と今後への期待を示した。

アステックペイントやプレマテックスなど直販メーカーの台頭に見られるように業界構造が大きく変わってきている。そればかりでなく、従来の塗料メーカーと塗装ユーザーの関係性においても、塗料ディーラーを超えて直接情報をやりとりするなど、塗料流通業のプレゼンスが相対的に下がっている。時代や市場環境の変化とともに、在庫やデリバリー、金融機能など塗料販売店の基本機能以上の役割が求められていることの証でもある。

より高度な営業スキルや知識武装、情報武装が求められているのは間違いがなく、製・販・装の一翼を担うメンバーとしての力量が試されている。市場が要求する「塗料販売のプロフェッショナル」をどれだけ多く輩出し、巻き返しを図るか。「学び」の重要性が鮮明になってきた。



塗装体験を通じてユーザーへの共感を持ちたい
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タイルガンで吹付塗装
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人的資源の育成をと海老名創会長
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知識を吸収できる座学も役立つ
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