再び人々で賑わう活気ある街にしようと、古くからある建物や風景を生かした街づくりが全国的に行われている。名古屋市にある中川運河の再生計画もその1つ。このほどアートとものづくりが楽しめるコミュニティスペースを設けるという社会実験がスタートした。敷地に設置されたコンテナ建屋には、日本ペイントが遮熱塗料を提供。行政、企業、地域住民などが関わる街づくりに塗料・塗装の価値を示す絶好の機会となった。
9月6日、中川運河沿いの一角(名古屋市中川区広川町5丁目地先)にオープンスペース「PALET.NU(パレット・ニュー)」が開設した。
平成24年に名古屋市が策定した「中川運河再生計画」の一環で、敷地には水辺を臨めるデッキステージとコンテナ建屋(2棟)を設置。音楽イベントや展示会、コワーキング、ワークショップなど、地域企業や市民が無料で施設を利用することができる。
「中川運河」が建造されたのは昭和5年(昭和7年全面開通)。名古屋港と旧国鉄「笹島貨物駅」を結ぶ全長約8.2kmからなり、当時は"東洋一の大運河"として名古屋市の産業を支えた。
かつてはこうした運河が日本の至るところで見られたが、水上から陸上輸送のシフトで大きく減少。それゆえに名古屋駅からほど近い中心部に現在もそのままの形を残す中川運河に、ウォーターフロントとしての集客効果、また観光資源になり得るとの期待を高めている。
しかし、こうした歴史性を抱える一方で、地域住民からは「あまり馴染みがない」との声も聞かれる。倉庫や港湾施設が隙間を埋めるように並んでいるため、就業者以外立ち入ることがなく、水辺が臨める風景でなかったためだ。
再生計画が策定され12年が経過。現在、運河に相応しい歴史的建築物の保存・活用を進めつつ、ライトアップやクルーズ船の航行、商業施設を誘致するなど、徐々に賑わいの場所としての環境を整えつつある。
その中で「PALET.NU」は、水辺、アート、ものづくりをコンセプトにした人との交流を目的に設立された。企業や地域住民、アーティスト、大学、行政機関などさまざまな主体が施設を活用することで再生への気運を高めたいとの狙い。オープニングセレモニーには、名古屋市の河村たかし市長も参席し、施設の活用を呼びかけた。
コンテナに遮熱塗装、効果を実感
「PALET.NU」には、ワークショップやアートなど多様な活動ができるコンテナ2棟が設置されている。そのコンテナに日本ペイントが外面に下塗り「サーモアイプライマー」、上塗り「サーモアイSi」(白)の遮熱塗装。内面に下塗り「1液水性デクロ」、上塗り「水性ファインSi」(白)をそれぞれ提供した。施工は業者とスタッフのDIYによるハイブリッドスタイルで行った。
同社に塗料提供のオファーが寄せられたのは、以前からCSR活動の一環として継続してきた落書き消し活動がきっかけ。
市民参加型プロジェクトとして中川運河の再生活動を行う一般社団法人「中川運河キャナルアート」とコラボし、昨年6月には中川運河沿いにある小栗橋ポケットパークで塗料提供と塗装指導を実施。子供たちが絵を楽しめるようにアートウォールキャンパスを作った。今回の「PALET.NU」の参画は、こうした地域活動が縁をもたらした。
建屋にコンテナを活用したのは、再利用が可能であること、社会実験としての有期施設であることが理由だが、遮熱塗装の効果は抜群。施設の運営関係者は「暑くて触れなかったコンテナが触れるようになった」「エアコンの効きが良くて驚いている」と遮熱塗料の効果を体感。今後も集客が見込まれるため、同社としてはいわば遮熱塗装の常設展示場を設けた形。社会支援活動から塗料・塗装の価値を訴求する絶好の機会となった。オープニングセレモニーでは、上席執行役員の藤原三也氏が協賛企業を代表して登壇し、「ぜひともコンテナで遮熱塗料の効果を体感して頂きたい。『PALET.NU』を通して地域の方々がつながり、活性化に寄与することを期待しています」と述べた。
また工業ディーラーの川口化成品は、中川運河の東支線沿いに倉庫を構える当事者として再生計画をサポート。川口洋平社長は、「築80年以上経過した倉庫は今も現役。倉庫を活用して街の活性化に寄与したい」と述べ、近いうちに倉庫壁面にペイントウォールを施す意向を示した。