関西ペイントは毎年、世界統一のコンセプトと先のグローバル市場に向けたトレンドカラーを開発・選定している。今年5月に発表された「Global Trend Colours(グローバルトレンドカラーズ)」は、「社会の大変革の中で、さまざまな『Re』に注目し6色のトレンドカラー」に決定した。

コンセプトの背景について「長らく注目されている社会課題を解決し、再生・再構築を試みる人々の姿がある」と分析し、「過去から学び、より高みを目指す我々に寄り添うモビリティをターゲット」として提案を推進する。

グローバルトレンドカラーズがターゲットとしているのは、自動車や2輪をメインとしたモビリティだ。自動車のカラーデザインが決まるのは2年ほどかかるため、トレンドカラーも2年先を予測し開発を行っている。

通常、製品のカラーデザインについては顧客の要望を受けて色を開発するが、一方で「ペイントサプライヤーの予測を聞かせてほしいというシチュエーションもあります。そのため、独自にトレンドを予測し色を開発してキーカラーを提案する活動」と開発・調達部門R&D本部意匠色材開発部デザイン・色材Gリーダーの藤枝宗氏はグローバルトレンドカラーズの位置づけを説明する。

開発コンセプト「Re」への思い

カラー開発にはアジアや欧州の関西ペイントグループ7カ国から10人ほどが参加している。各自が各地域から持ち寄ったトレンド予測やリサーチ情報を集約して統一のトレンドとして発信する。

活動は8カ月間を費やし、各地域の色彩開発担当者と綿密にミーティングを実施。藤枝氏は「コロナ禍では集まることができませんでしたが、リモートと組み合わせて基本的には年に1回日本で全員が集まるようにしている。どうしてもデザインの世界では、対面しないと伝わらないことがあります。合意に持っていくには集まって話し合うプロセスが大事で、グローバルトレンドカラーズは1つのモノを作り上げていく活動」として世界統一のコンセプトを重要視する。

今回のコンセプト「Re」について、開発・調達部門R&D本部意匠色材開発部デザイン・色材Gのカラーデザイナーである遊馬知里氏は「各国から情報を持ち寄ったとき、トピックが同じような傾向になりました。Reに決めたときは2022年で、コロナ禍が残っていた時期でした。ただ海外では行動が解禁されていたり、変わり目の時期と言えます。それぞれ考え方が違うこともありましたが、コロナ禍が明けた先を見据えるところは共通していました。デジタル化や環境問題などコロナ前に意識していた世界が身近に感じ、再生・再構築の方向に行くだろうと導き出されました」と「Re」に至った経緯を振り返る。

ただし意見集約の過程では国の違いによる難しさがあるという。「それぞれ全然違うバックボーンがある中で、言葉の問題もあり感じ方やイメージするカラーや質感も異なる。一番苦労するのは、お互いに考えていることを理解すること。誤認識すると情報伝達できないので、そこは何度もやり合う。お互いの真意が伝わるまでが大変です」(藤枝氏)。

そうして導き出されたコンセプトと開発カラーは、関西ペイントグループのグローバル戦略に重要な役割を担っている。

特に海外においてその役割が一層発揮されている。かつては、日本主導でコンセプトを決める仕組みであったが、今は最初から全員で合議するスタイルに変更した。当初は海外の顧客デザイナーへのカラー提案は、日本のカラーデザイナーも同行し一緒に提案していたが、今はその地域の色彩開発担当者のみで提案活動を行うことが増えてきた。

自らもコンセプトから関わったグローバルトレンドカラーズに対する思い入れが増し自発性や提案力が高まっており、成果として現れてきている。
また、塗料メーカーとしてのグローバルトレンドカラーズのため、実用性を重視する。

「そもそもお客さんが使えるモノという思想ではじめました。材料や塗装技術に関して、全くできないものを提案するのではなく、お客さんが実用化できる塗色であることを心掛けています」(藤枝氏)として、グローバル展開を見据えた活動と位置付ける。

材料に関しては、新しい材料も取り入れているが、国によって使用や調達が難しい場合も考えられるため、置き換えも加味している。
今後の展開として、内容を充実させるために準備が増えていることもあり、プロセスの効率化と内容の更なる充実を目指す。

現在は自動車産業を顧客に抱える地域が参加する形を取っているが、今後は参加地域を増やすことで展開の広がりも見据えている。

関西ペイントグループの色彩エキスパートが結集し、皆が納得するカラーを開発することが顧客のためになるとして、グローバルトレンドカラーズの更なる充実を図っていく。

ペイント&コーティングジャーナル2024年11月20日付「いいろの日特集」より