「これからシステム連携ができるか否かが顧客から選ばれるための条件になる」と話すのは、塗料・塗装業界向けに販売管理ソフト、システム開発を行うP4NEXTの井上芳文社長。企業に共通する人材不足を背景にサプライチェーンに関わる企業同士のデータ連携が不可欠になるとの未来像を見据えている。

井上氏が15年勤めた塗料商社から独立し、同社を設立したのは2019年。「このまま古いやり方を続けていては、若い人が入ってこない業界になってしまう」との危機感から塗料・塗装業界に特化したシステム会社を立ち上げる。

現在、手がけるのはクラウド型塗料販売管理ソフト「P4NEXT CLOUD」をはじめ、業務システム及びアプリケーションの開発、IT関連製品の販売、動画・名刺・チラシ制作、ホームページの制作・運営など。ITを活用した効率化支援から業界企業の活性化をサポートする。

中でも井上氏が"古いやり方"として挙げるのが塗料、資材の受発注業務。塗料販売店においては、電話、メール、FAXと異なる注文様式に担当者は一度メモに書き留めた後、PCで注文書、納品書と転記を繰り返し、出力するのが一般的。加えて営業から寄せられる在庫や納期の確認、材料発注などにも対応する。塗料販売店としては日常の光景だが、「デジタルで育った今の若者には通用しない」と商品の流れや情報をフラットに共有できる一元管理の重要性を訴求する。

しかし、会社を設立して6年が経過。なかなか塗料販売店から良い反応は得られなかったという。「詳細は分からないが、必要と感じられていないのかもしれない」と井上氏。そこで提案の矛先を塗装ユーザーに変えたところ、局面が大きく変わる。特に工業系の塗装会社からの引き合いが増えているという。

そこで現在、同社が塗装工場に提案するのが①ロボット受注②インターネット発注③インターネット情報共有。

ロボット受注は、人の作業を自動化するAIを搭載したRPAを活用したもので、仕入先、客先から送られてくる発注書や図面、納品書の他、社内の日報、勤怠表、点検表といった帳票をコピー機でスキャンした途端、指示したファイルに一瞬で自動作成されるというもの。帳票を手入力する時間を省略できるのが最大のメリット。1日3時間×月20日で月60時間削減する。

またインターネット発注は、仕入先ごとで異なる注文書式や注文方法の違いに依存することなくインターネットでひとまとめに発注できるのが特長。登録商品からネット購入をする感覚で材料、資材を購入する利便性がある。

インターネット情報共有は、受注状況や生産状況、また塗装仕様書など関連資料をリアルタイムで確認できる仕組み。情報を一元管理することで伝言ゲームによる誤認識やタイムラグの防止を訴求する。

この他同社は、電着塗装で使用する純水の削減、温湿度センサによる塗装不良の条件特定、シーケンサーデータを活用したガス代削減などソリューションシステムの提案も強化している。現在、取引企業数は約700社。塗装ユーザーが業界DXを牽引する可能性が出てきた。