カーシェア時代のニュービジネスに期待
異業種の参入呼び込む

関西ペイントは、2018年9月中旬に上市した自補修向け「オール水性有機則フリーシステム」の事業コンセプトを報道陣に明らかにした。昨年12月に同社本社で開催した会見に立った石野博社長は、「新製品は有機則フリーを実現したことが最大のポイントとなっており、自補修業界を取り巻く社会の変化に対応する新しいビジネスモデルを提供するところが従来と大きく異なる」と強調。所有から共有へシフトする車社会の変化に対応するビジネスモデルになるとして期待を示した。


同社が開発した自動車補修向け「オール水性有機則フリーシステム」は、プラサフ(レタンWBエコ EVプラサフ)、ベースコート(レタンWBエコ EV)、クリヤー(レタンWBエコ EVクリヤー)と下塗りから上塗りに至すべての塗装工程を水性化した世界初のシステム。特に硬化剤、希釈剤を含め、重量比5%以上を含有する54指定化学物質を対象にした有機則の適用を受けない点が最大の特長となっている。

これを市場展開する上で、同社が着目したのは、自動車に関する幅広い業態に対する補修塗装サービスの導入支援。水性かつ有機則の適用を免れることで、局所排気装置の設置や健康診断、作業環境測定の義務とともに、それらに伴うコストが不要になる。更に周囲への臭気・騒音対策などが軽減され、都市部でも塗装サービスの事業導入が容易になると判断、さまざまな業種、業態に広められると着想した。

更に車色配合データが簡易に算出できるコンピュータ調色システム「AIカラーシステム」と組み合わせることで、調色技能の簡易化につながると訴求する。未経験者など技能者に依らない塗装サービスの提供が可能になるとしている。

既存の自補修業界から反発を受けそうなビジネスモデルを同社があえて表明した背景には、車を取り巻く環境が大きく変革するとの見方がある。代表的なのは、簡易な手続きで短時間でのカーレンタルを可能にしたカーシェアリング事業の台頭だ。

同社が示したグラフによると、現在カーシェアリングサービスに登録している会員数は100万人を突破し、車両台数は2万5,000台と右肩上がりの増加を続けている。事業会社もオリックス、カータイムズプラス、カレコ・カーシェアリングサービスをはじめ自動車メーカーや携帯通信会社も参入するなど、成長産業として注目が高まっている。

今回の「水性有機則フリーシステム」は、カーシェアリングサービスを含めた自動車サービスの複合展開を図る事業体への提供を想定している。

石野社長は「車を所有することから、乗車人数や利用シーンによって車を選んで利用するスタイルに変わってきている」とした上で「利用者は綺麗で新しい車を求めるもの」と美観ニーズが新たな補修需要を喚起するとの期待を示す。既に「カーシェアリングサービスの提供者からシェアカーに生じる擦り傷などの対策について要望が寄せられている」(担当者)と話す。

同社はこうした事業会社に塗装サービス提供を図り、美観ニーズに対応していく意向。事故車修理を基盤とする現存の自補修市場とは重複しないとの見解を示す。

提案研修、技能サポートを開始

システム展開に際し、まずはカーシェアリング提供会社やカーディーラーなど全国的に事業を行う企業との連携を進めていく方針。そのため、営業・技術面でのサポート体制を強化する。

サポート体制は、提案型研修、導入支援、アフターサービスの大きく3つに分けたサポートプログラムを策定。

導入前に実施する提案型研修では同社のテクニカルセンターを活用し、仕上がり感の見極めなど、作業の標準化を習得するための生産性診断の他、環境改善、人材育成(トレーナー育成)、機器設備・ツール・副資材の有効活用を実施していく。

導入時に行う研修では、水性塗料導入前診断(設備・工程)やAIカラーシステム導入診断をはじめ、現場技術フォロー、工程改善提案、定期診断・研修などを継続的に実施していく方針。アフターフォローでは、営業所、工場、研修センターを含めた全国24拠点の同社ネットワークと取引販売店(200拠点以上)を活用し、製品供給などのサービスを行っていくとしている。

今回のポイントとなるのは、オール水性化技術を環境配慮ではなく、人の健康や安全性に焦点を当てたこと。誰にでも扱える製品の安全性に加えて、法規制への対応や設備面、在庫など塗装に対する参入障壁を下げることが、塗装サービスの活性化とともに、技能工不足の解消につながるとの狙いがある。



左から石野社長、真貴田厚氏(関西ペイント販売取締役自動車補修塗料販売本部長)、小野山裕之氏(関西ペイント汎用塗料本部〈車両〉副本部長)
左から石野社長、真貴田厚氏(関西ペイント販売取締役自動車補修塗料販売本部長)、小野山裕之氏(関西ペイント汎用塗料本部〈車両〉副本部長)

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