高機能塗料展が閉幕 プロセスイノベーションの方向へ
環境対応,生産性向上に照準

「第1回高機能塗料展」(主催・リードエグジビションジャパン)が2018年12月5日から7日までの3日間、幕張メッセで開催された。5月の「第1回関西高機能塗料展」に続く同展には、約100社・団体が出展。併催展(約880社)を含めると約6万人が来場した。金属、フィルム、プラスチック、接着・接合の各分野の材料技術が一堂に会する中、塗料・塗装技術の方向性と潮流を探った。


基調講演として初日のオープニングイベントを飾ったのは、日本ペイントホールディングス・田堂哲志社長とPPG Automotive OEM Coatings, Global Technology Director・Dennis Taljan氏の講演。両者の講演を聞こうと約550名が聴講に訪れた。

関西高機能塗料展に続いて基調講演に立った田堂氏は、グローバル塗料市場の動向と同社のグループ戦略について述べ、世界の塗料需要の見通しについて言及した。

同氏は「2020年は2004年比で2.5倍の約20兆円、2030年には約30兆円の成長が予想されている」と需要動向を示した上で「間違いなく塗料産業は成長産業にある」と強調した。更に世界の塗料需要の内、アジアが45%、建築用が41%占めている現状に触れ、ウットラムとの戦略的経営でアジア事業のシェア拡大を図る同社のグローバル事業の成長性の高さをアピールした。

一方、Taljan氏は自動車を取り巻く将来のモビリティに対する塗料技術の動向について説明した。

同氏は冒頭に顧客ニーズ、生産性向上、材料の進化などの変化のスピードが速まっていることに触れ「塗料のイノベーションにチャンスが生まれている」とし、コーティング関連の特許数が増加している現状を説明した。

その中で同氏は自動車塗装におけるエネルギー消費の高さを課題に挙げた。「自動車工場の電力消費の内、約70%が塗装に費やされており、塗装は自動車の生産改革の障壁となっている」と指摘した。

続けて同氏は「将来コーティング技術がなくなることを考えることは怖いことだが、可能性を検討しなければ新しいアイデアは生まれない」と説明。更に「規制は将来の戦略になる。歓迎すべきこと」とし、推進している改革プロジェクトを通じ、外観、ユニットコストの削減、コンプライアンス対応、オペレーションの自由度、機能の5つを底上げすることが成功の鍵になると訴えた。

材料技術が融合する

新興国の経済成長と連動して堅調な成長を続けるグローバル塗料市場に対し、各社の出展内容を見ると、環境対応、生産性向上、素材の変化を視野に機能性と意匠性を深掘りしていく方向で共通する。特に粉体塗料やUV塗料は、それらを両立する技術として、各社が最新製品を紹介した。

しかし、将来的には日本発信の技術として、グローバル展開につなげたい期待感があるが、ものづくり全体がAIやIoTの活用を目指す中で、塗料需要の拡大に寄与するかどうかについては、不透明感も拭えない。

そうした中、特に異彩を放っていたのが、フィルム塗装技術を初披露した帝人フィルムソリューション。本来であれば、高機能フィルム展のコーナーに配置されるところ、同社たっての希望で高機能塗料展に出展した。

開発したのは、フィルムにカラーコート、クリヤー塗装したものを成形品に圧着させる技術。会場では自動車ボディへの応用を訴求した。

ポイントとなるのは生産性とエネルギー負荷の低さ。担当者によると、30m長のブースにフィルムを入れ、ロールコーター塗装、乾燥(約110℃)を行い、約30秒で巻き取ることができるという。 「自動車塗装ラインの長さやエネルギー負荷を解決するプロセスとして開発した。スプレー塗装をフィルムに置き換えるもので、脱塗装を狙うものではない」と説明。塗装とフィルムの融合が形を見せた。

こうした化学品原料メーカーである同社が生産プロセスにまで踏み込んだ背景には、「フィルムは原料ではなく、加工製品。加工業である以上、市場を創出していく取り組みは欠かせない」との考えがある。

この他、タクボエンジニアリングがホースレスガン、パウチ入り塗料を搭載した回転塗装専用ロボット「新型スワン」を出展。生産プロセスの革新に寄与する技術に関心が集まった。



「高機能塗料展」会場全景
「高機能塗料展」会場全景
フィルム塗装を初披露(帝人フィルム)
フィルム塗装を初披露(帝人フィルム)

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