関西ペイントは4月から次世代耐火被覆材「耐火テクト」(責任施工制)の販売を開始する。1時間及び2時間の耐火認定に必要な膜厚を1回塗りで得られる他、従来の耐火塗料に比べ約3分の1の工期短縮を実現したのが特長。更に耐水性を付与し屋内外での使用を可能にするなど、「画期的な製品に仕上がった」(石野博社長)とロックウールに替わる新機能材として需要拡大に挑む。

建築物における防耐火関連法規では、火災時の退避時間を確保するため建物階数に応じて間仕切り壁、外壁、柱、床、梁などに対し耐火性能の確保が義務付けられている。現在、都市部を中心に大型建築構造物の需要が高まっており、それに伴い耐火被覆材も伸長。2017年の耐火被覆面積は約2,500万㎡(同社調査)と2013年以降右肩上がりの成長を続けている。

被覆工法の1つである耐火塗料も鉄骨を現しで使えるデザイン価値をメリットに空港や公共施設などの大型施設で採用を広げるが、工期やコストの観点からロックウールが多用されているのが現状。ただロックウールにおいても活況な需要に供給が追いつかない事態や吹付作業者の絶対的不足、他工事との共同作業ができないなどの慢性的な課題を抱えている。そこで同社は耐火被覆材の市場性と既存工法が抱える課題解決に寄与することで需要が取り込めると製品化に踏み切った。

今回同社が開発した「耐火テクト」は、発泡性ポリエーテル樹脂を主成分とした2液反応硬化型塗料。従来の耐火塗料同様、鉄骨のフォルムを生かした建築デザインを可能にする他、厚膜性を有し1回塗りで1時間及び2時間の耐火認定膜厚を得ることができる。耐火性能においては、載荷加熱試験で厳格化された改正建築基準法での適合を取得した。

特に従来の耐火塗料にはない差別化に据えるのが、約3分の1に短縮した省工程仕様。

2時間耐火の施工の際、一般的な耐火塗料が主剤塗り(6日)、乾燥・養生(6日)、中塗り(1日)、上塗り(1日)の約14日を要するのに対し、耐火テクトは主剤塗り(1日)、乾燥・養生(2日)、中塗り(1日)、上塗り(1日)の約5日での仕上げを実現。ロックウール(約7日)よりも短縮し、かつ工場でのプレ施工も可能にするなど用途性を確保した。

一方、ロックウールとの差別化については、室内空間制約の緩和に寄与する点。「ロックウールの場合、梁に使われるH型鋼に4~5cm被覆し、更に配線や配管のための余剰スペースを設ける必要があるが、断熱テクトの被覆は3~4mmのため、天井高を高くしたり、建物高さによってはフロアを増やすこともできる」とメリットをアピール。

耐火テクトの設計価格は1万円/㎡(300㎡以上の場合)とロックウールと比べて3倍以上のコスト高となるが、「工期短縮によるコストダウン効果や工事全体の効率化などトータルで見れば、理解は得られると考えている」と説明。ロックウール市場の取り込みに自信を示す。

同社は同品を2021年に売上高30億円に引き上げる方針。今後は3時間耐火の開発にも意欲を示すなど、塗料の領域を超えた機能材に新たな商機を見出そうとしている。