遮熱塗料出荷量、2020年度は10%減

高日射反射率塗料(遮熱塗料)の2020年度の全出荷量は、10.2%減の1万3,798トンとなり、3年ぶりの減少となった。新型コロナウイルスの影響を受け、建築塗料全体が低調に推移する中、遮熱塗料としては統計開始以来最大の減少率となった。ただ2021年度以降は、市況の回復以上に成長への期待が高まっている。国が掲げる"脱炭素化"が需要拡大を後押しする可能性が出てきた。


日塗工がまとめた高日射反射率塗料の2020年度全出荷量の内訳は、建築用が9.5%減の1万3,162トン、道路用が24.5%減の572トンとなり、実数ベースでは建築用が1,385トン、道路用が186トン減少した。

道路用においては、暑さ対策として東京オリンピックのマラソンコースに採用されるなどの特需があったが、2019年度までに工事はほぼ一巡。更にマラソン会場が急遽札幌に変更されるなどの事態にも見舞われ、大きく落ち込んだ。

それでも遮熱塗料市場全体に占める影響はわずか。トレンドとしては、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、遮熱塗料が主戦場とする戸建てや工場建屋の塗り替え需要の減少が大きく響いた。全出荷量の1万3,000トン台は2015年以来、5年ぶりの水準だ。

改めて近年の遮熱塗料の推移をたどってみる。

2004年度の統計開始以来、メーカーの旺盛な市場参入もあり、コンスタントに右肩上がりの成長を続けてきたが、2014年度に踊り場を迎えて以降、明らかな鈍化傾向が見られる。

その要因として考えられるのが、2011年東日本大震災の原発事故に端を発した節電ブームが終焉したとの見方。当時、窓用や歩道用といった用途拡充の動きも活発化したが、限定的な需要にとどまっている現状がある。

2018年度、2019年度は上昇に転じたが、消費税増税前の駆け込み需要や関西、関東を襲った台風被害による復旧工事といった特殊要因にが加わったことが大きい。そしてコロナ禍に伴う減少を強いられた2020年度と直近の定点観測を難しくしており、現状としては2014年度から2017年度に推移した1万4,000トン前後が実力値と見られる。これは、市場が飽和状態にあるとして、樹脂グレードによる高級路線を鮮明にするメーカーの製品戦略とも一致する。

当初は、ヒートアイランド対策や省エネに寄与する環境材料として期待を集めた遮熱塗料だが、現状は踊り場の状況が長く続いていることが分かる。

しかし、ここにきて再び遮熱塗料の需要を押し上げる可能性が出てきた。SDGs、カーボンニュートラルに対する気運の高まりだ。

今年5月26日、2050年までの脱炭素社会の実現を基本理念として規定した「改正地球温暖化対策基本法」が成立。2050年の温暖化ガス排出ゼロに向けて、2030年度までに2013年比で46%削減する目標を定めた。

これを受け、国土交通省、経済産業省、環境省が連携し、「脱炭素社会に向けた住宅・建築物の省エネ対策等のあり方検討会」が発足。既に4回の検討会を経て素案がまとめられ、新築住宅・建築物については、ZEH(ゼロエネルギーハウス)、ZEB(ゼロエネルギービル)実現による省エネ性能の底上げ、既築建築物はリフォームに適用しやすい建材、工法の開発、普及促進が方向性として示された。

現在のところ遮熱塗料は、太陽光パネルのような国の環境政策と連動した位置づけにはないが、省エネに寄与する特性から仕様選択の上で優先度を上げてくることが予想される。 

既に塗り替えの現場では、SDGsと絡めた提案活動が活発化しており、遮熱塗料を再び社会に訴求する機会が生まれている。




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