開店3年、「施工待ち」抱える人気塗装店に

埼玉県の東部に位置する幸手(さって)市。この街で、開業後わずか3年で多くの施工待ちを抱える人気店に成長した塗装店がある。塗装会社カラーズが3年前にオープンした住宅塗装リフォーム店「塗替え本舗」だ。"地域密着"に基点を置いた増山将社長(写真)の思いとアイデアと行動が人気の塗装店へと導いた。郵便局を舞台にしたイメージ作戦などユニークな活動が光る。


増山社長は19歳で木工塗装の会社に就職、漆やカシュー塗料を扱う塗師(ぬし)の世界から塗装人生がスタートした。25歳のときに独立起業し、塗装会社カラーズを設立。木工塗装の技術を生かし、店舗の塗装工事や家具塗装の請負、仲間の建築塗装の応援など幅広い仕事をこなしながら事業を育てていった。

会社が軌道に乗り始めるにつれて、増山社長にはある思いが芽生えていった。「もっと会社の"芯"になるようなものがほしい」との思いだ。事業が順調に進み始めたからこそ「頼まれた仕事を、ただこなしているような毎日」に対して抱いた疑念。請け負いという受身ではなく自社主体で成長を目指せる会社にしたいとの思いが強くなった。

そうした考えを重ねて行き着いたのが「地域密着の塗装会社」だ。「自分が生まれ、育ててもらったこの幸手市で、街や人々の役に立ち必要とされる塗装会社として成長できればこんなにハッピーなことはありません。この気持ちの高ぶりこそが事業の"芯"なのだと確信しました」と振り返る。

そして2016年夏に、東武伊勢崎線・幸手駅前に屋根・外壁塗装の専門店「塗替え本舗」をオープン、住宅塗装の地域密着展開がスタートした。

安心の器"郵便局"に着眼

オープンから3年も経たないうちに「現在、施工をお待ちいただいているお客様が30棟」という、地域の人気塗装店に成長している。社員職人(7名)のみによる施工のため、「月間で5~6棟が精一杯」ということもあるが、来店型店舗、チラシ、イベントだけの反響営業で施工待ちが出るほどの受注を実現しているのは、同社ならではの地域密着展開が背景にある。

1つはやはり、地域活動への深い関わりだ。地域の商店街組合や商工会への加入、幼稚園や小学校のPTA役員、市民まつりや市の産業祭への出店(展)など地域に溶け込める機会があればどんどん関わっていく。

例えば、幸手市の観光イベントとしても有名な「権現堂の桜まつり」では、足場を組んで壮大な桜並木を一望できる展望台を設置、多くの人に喜ばれている。地元のさまざまな活動に「地域の人たちの笑顔が見られることが嬉しい」といったスタンスで関わっていることが、事業者の立場を超え、もっと市民に近しい存在としての親近感を育む。「街を歩いていて『塗替え屋さん』と声を掛けられることもしばしば」というように、地域の人たちととてもフレンドリーな関係性が築けているのだ。

3年前にオープンした店舗の存在も見逃せない。駅前ロータリーに隣接しているので、駅を利用する多くの人に視認されるとともに、ガラス張りで中を見通しやすいオープンな雰囲気で親しみやすさを演出。「地域に根を下ろした当店の顔」としての役割が浸透、信頼の醸成に一役買っている。

そして、同社ならではのユニークな取り組みに「郵便局で行う外壁塗装の無料相談会」がある。

同社は2カ月に1回、地元の主要な郵便局の中にブースを設置し、塗り替えリフォームの相談会を行っている。といっても、チラシや案内を置いているくらいのもので、担当者は配置しているものの積極的なPRは行っていない。「当社の存在を、何となく知っていただくだけで十分」だからだ。

郵便局といえば、地域の人たちの利用頻度が高い公的な施設。そこに、正式にブースを構えていること自体で無意識の安心感が宿り、同社のイメージ付けがなされる。「その場で相談をされる方はほとんどいません。ただ、塗り替えが必要になったときに当社のことをポジティブなイメージで思い返していただくことが大事」と狙いを語る。

2カ月に1回なのは年金受給日に合わせているから。「この日は受付の行列ができるほど多くの方が来局されます。並んで待っている間の暇つぶしに当社のブースを何となく眺めたり、チラシを手にとっていただくだけでも十分に宣伝になっています」と、"郵便局"という器に着眼した点が光る。

ちなみにこの事例は、同社も所属する関西ペイントの施工店ネットワーク「リフォームサミット」の研修会で発表、多くの同業者の関心を呼んだ。

事業の"芯"を「地域密着の塗装会社」に置き、そこから出てきたアイデアや活動を実践してきたことで「数カ月先まで」の施工待ちを抱える人気店に成長した。企業相手の従来の請負仕事と自社元請けによる住宅塗り替えとの比率が「半々」にまでなり利益率も大幅に向上、経営の"芯"も確実なものになってきた。

「『塗替え本舗』の仕事はほとんどが車で10分以内の範囲なので、現場同士で工程の融通をし合え、非常に効率が良い。遠くの現場へ出向くことの多い従来の仕事に比べ、時間的、体力的に社員(職人)の負担も軽減、働き方も改善されています。社員も全員幸手市の人間なので、地元とのつながり意識が仕事へのモチベーションを高め、良いサイクルになってきました。無理して規模を追うことはせず、地域に必要とされる度合いに応じて成長していく、そんな企業を目指しています」と、地域密着の"芯"もぶれることはない。



店舗外観
店舗外観
増山将社長
増山将社長
郵便局での無料相談会
郵便局での無料相談会

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