ビックケミー・ジャパンは7月26日、塗料添加剤オンラインセミナーを開催し、登壇したドイツ・BYKのMarkus Vogel氏(建築塗料エンドユースマネージャー)が建築塗料分野向け添加剤について解説した。塗料添加剤部の桜木啓介氏が通訳を務めた。
今回、参加者の関心を集めたのが、ヨーロッパの建築用塗料トレンドについて述べたセッション。気象状況や法規制を背景に国内との違いを浮かび上がらせた。
Vogel氏は、まず建築用塗料を外壁用、内壁用、屋根用、床用、道路標示、金属用、木部保護・防腐、窓枠用、多彩塗料、店頭調色に分類。その上で塗料開発について①サステナブル性②耐久性(耐用年数)③新しい製品技術④新製造プロセス⑤配合コンセプト⑥法対応の6項目が柱にあると指摘した。6つの技術課題に対する具体策は下記の通り。
○サステナブル性:バイオマス原料の採用。輸送、塗料寿命、廃棄に至るバリューチェーン全体に対する検討。
○耐用年数・耐久性:機械的物性、耐薬品性、耐候性などの付与。
○新しい製品技術:塗料の粉体・粉末化。防腐剤フリー、VOC削減、輸送性向上。
○新製造プロセス:バッチ式に替わるインライン分散による連続生産プロセス。効率生産への寄与、配合評価検討のスピード化。
○配合コンセプト:ロバスト(堅牢)性のある配合設計。高温、低温、高湿度など厳しい気候環境に応じた塗装性、物性の確保。シリケート塗料に代表する高Ph塗料への対応。
○法規制対応:各国の法対応。溶剤・水性塗料規制、環状シロキサン規制、エコラベル対応など。
Vogel氏は「いずれの開発テーマもサステナブル性につなげることが重要となっている」とバリューチェーン全体に配慮する重要性を強調した。
中でも塗料技術として1つの方向を示したのが、塗料の粉体、粉末化。「水性、溶剤塗料とも液体として輸送上の負荷がある。また防腐剤やVOCの観点からも塗料の粉体化によるメリットは大きい」と指摘した。
また塗料の耐久性については、光沢保持率による耐候性や低汚染性を重視する日本との違いを示した。
Vogel氏が耐久性の指標として挙げたのは耐スカフ性、耐擦(こす)れ性、耐水性、耐染色性。耐スカフ(scuff)性は、ゴムで擦った際に付着する黒筋汚れに対する耐性。水の浸入による膨潤を抑える耐水性や耐染色性を含め、美観性能を重視する傾向が見られた。
最後にVogel氏は、厳しさを増す法規制について言及。「バイオサイド(防腐剤)規制の他、有機スズ化合物やSVHS(高懸念物質)、SVOCについても規制の議論が進められており、従来技術と異なる新技術が求められている」とコメント。塗料のサステナブル性を確保するため、低SVOC化、LCA、カーボンフットプリント、再生可能原料の拡充、エコラベル対応、無毒性などが重要視されている現状を伝えた。
その後、Vogel氏はこれらの技術トレンドを踏まえ、自社の湿潤分散剤、消泡剤、粘性調整剤の特性を紹介。添加剤処方の留意点やトラブル対策について解説した。
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