2023年の屋根用塗料市場は、建築用塗料と同様、販売数量は減少、金額は増加した。販売金額においては、価格是正効果に加え、高付加価値製品が寄与した形。2024年も市況の弱含みが予想される中、高付加価値製品で価格を押し上げていく流れは、一層加速していくと見られる。

現在、その高付加価値化を牽引するのが、フッ素、無機系に代表される高耐候グレード製品。外壁用に追随する形で昨年から無機系屋根用塗料の投入が活発化しており、今後更に製品数が増える見通し。塗り替え回数の低減をアピールポイントに"高耐候性"の強さを改めて示した形だ。

しかし、こうした高付加価値製品もやがては価格競争から汎用化することが想定される。次のフェーズを見据えた製品施策に関心が集まるが、現時点で次の態勢は明らかになっていない。省工程化や水系化、クリヤー工法など、ニーズの行方を探っている状況だ。

重要なのは、新たな価値訴求がユーザーの信認を得、かつ需要家に付加価値を訴求し得る方策となるか。屋根基材も瓦、スレート、ガルバリウム鋼板、アスファルトシングルと刻々と変化、細分化するため、塗装による耐久性追求は、ある意味半永久的に訴求可能な価値とも言える。とはいえ、カバー工法やフィルム工法なども台頭しており、塗料的な目線だけではなく、塗装自体の価値向上も重要な施策となっている。

その意味で遮熱塗料は耐候性に代わる新たな付加価値製品としての役割を担ってきたとも言える。
今回のメーカーシェア調査では、「販売額が増加した」との回答が多数を占め、メーカー出荷額(本紙推計)を158億円に引き上げた。

戸建て塗り替えに限れば、数量自体は落としたものの、価格改定、高耐候グレードのシフトが牽引した形。特筆すべきは、外壁塗料への製品展開と工場、倉庫など企業営繕需要の活発化が需要を押し上げている。

白色・淡彩色を中心に企業物件に特化する遮熱専業ブランドを除き、一般屋根用塗料の高グレード品に遮熱色を加える動きが活発化。更に外壁用塗料に派生する傾向が強まっている。開口部や断熱材がある戸建て塗り替えの遮熱塗料は、効果が限定的と塗装ユーザーでも積極派、慎重派と二分する傾向があるものの、一般塗料との延長線上で提案できるオプション機能の位置づけが需要を広げている。

ただこれらは、施主に選択肢を明示した意味合いが強く、遮熱塗料の需要創出をことさら強調したものではない。むしろ遮熱機能をポジティブに捉える需要領域として企業物件の存在感が高まっている。

今回、特集テーマとして脱炭素化に対する遮熱塗料拡大の可能性を探ってみたが、脱炭素化策として遮熱塗料を採用する話はほぼ聞かれなかった。むしろ目立ったのは"暑さ対策"としての採用拡大。以前から顕在化していた領域だが、先述の専業メーカーを含め、建築用塗料メーカーのすべてが企業物件への営業強化を表明しており、需要拡大の気運を高めている。

その中で今回、塗料ディーラーの中島商会が自社の危険物倉庫に遮熱塗装を行った記事は、"暑さ対策"の有効性を実感した事例として説得力を高めている。
年々厳しさを増す夏場の労働環境は、企業として対策を不可避なものとしており、大企業から中小零細企業への波及が予想される。

建物構造や設備、立地環境の違いからロジカルな実証を難しくしていた遮熱塗料だが、"暑さ対策"によって息を吹き返しつつある。(近藤)