トップ工業(本社・埼玉県川越市、代表取締役・髙橋正氏)は、埼玉県朝霞市にあった和光事業部の塗装工場を昨年11月に川越市の本社工場に移転した。新たに12mの塗装ブースを設置し生産性を高めると同時に、2工場間の人材交流が期待でき効率化を目指している。
和光事業部はもともと埼玉県朝霞市で和光塗装工業所として焼付塗装会社を営んでいたが、2012年にトップ工業が同社の株式100%取得し子会社化した。昨年には合併しトップ工業の和光事業部として事業を行っていた。
そんな中、和光事業部の塗装設備の老朽化が進み更新時期に来ていたこともあり、建て直すよりも本社工場に移転するに至った。和光事業部を本社工場内に置くことで、さまざまな効果が期待できるとの考えもあった。
昨年11月に川越市の本社工場に和光事業部の塗装ラインを移設した。従来倉庫があった場所に塗装ラインを設置し、水洗式の塗装ブースを2つ、乾燥炉はバッチ式とライン乾燥炉を備えている。
トップ工業は量産品に適した塗装ラインの構成である一方、和光事業部では少量多品種を取り扱う塗装設備となっている。
塗装設備は大物に対応した単独ブースと塗装ラインの2つを揃える。単独の塗装ブースは2mまでの大物ワークサイズにも対応している。重量物もあるため天井からホイスト式クレーンを設置、塗装後は隣接する乾燥炉にワークを移動させて焼付乾燥工程に入る。クローズドされた塗装ブース内の空調は上から下へ流れており塗料飛散を抑えた空調設計としている。
12mの塗装ブース 風流・温度管理
ラインの塗装スペースは全長12mあり、室内は仕切りで区切ることなくつながっているのが大きな特徴。同社が扱う塗装品では、2コート、3コートといった複数仕様が多く、塗料系も溶剤塗装をウエットオンウエットで複数回塗装したり、プライマーに溶剤塗装を行った上に粉体塗装で仕上げたりと多様な塗装を行う。
そのため、旧工場では3mの塗装ブース3室で行っていたが、新工場では12mの塗装ブースに設計。横並びで2名、3名が塗装でき、仕切りで分かれていないのでラインスピードを落とす必要もなく、情報伝達や人手のやり取りもスムーズにできるようになり効率が高まった。
更に仕切りを設置しなかった大きな理由が乱流対策だ。塗装ブースはクローズドでこちらも空調は天井から床に放射状に空気が流れている。仕切りがないため空気の流れが安定し、塗料飛散やゴミブツが舞い上がることも防げる。
また、塗装ブース内の給気については、冬場の気温が低い時期には加温してブース内に送っている。ブース内温度が下がり過ぎると塗料粘度に影響を及ぼし塗装不良の原因になる可能性がある。特に溶剤塗料は固くなり塗りにくくなってしまうなどの問題が発生する。品質確保のためにもブース内の温度管理を図るため、2階に加温バーナを設置し給気を行っている。
ブース内の風の流れを安定化させるとともに温度管理を行うことで品質確保を図っている。
塗装ラインの移設及び改善を行ったことで効率が高まり生産能力は増している。そこで、ラインの能力を最大化するために重要となるのが人材だ。将来的には機械化・ロボット導入も想定はしているものの、現状では人材育成に注力している。
和光事業部の塗装は"人"によるため塗装担当者の確保・育成が生産性に直結する。塗料は色替えも多く、塗料調合作業を含めてスキルアップが重要となる。熟練者が指導できる体制を整え人材育成に取り組んでいる。
2つの工場が同じ敷地内にあることで人の交流がスムーズになった。トップ工業と和光事業部では塗装品の種類や塗装設備の特性が異なるため、基本的には別部隊として従事している。ただ、従業員の急な欠勤、繁忙期の対応などでは人的サポートが可能になった。新工場体制となり和光事業部として事業拡大を目指している。
また、トップ工業としては新規事業として塗膜剥離事業の展開に注力している。従来、塗装治具剥離装置により自社で使用する治具の剥離を行っていた中で、事業として剥離を請け負う体制を整えている。
剥離装置を追加導入し能力増強を図っており、塗装業者やメーカー系塗装工場からの剥離請負を進めていく方針だ。塗装事業だけでなく剥離事業も成長させることでトップ工業として成長を目指している。