意匠性の高い塗料や塗材の本場イタリアから、その本命ともいえるブランドが日本に上陸した。国内総代理店のSPIVER Japan(神奈川県川崎市、光宗里咲社長)が昨年から展開を始めたイタリア製の高意匠性塗料ブランド「SPIVER(スピバー)」だ。世界60カ国以上に輸出され、数々の名建築の壁を飾っている装飾塗材の実力派。大切にしているのは、塗り手(職人)との共感、共鳴、共振だ。
石灰と砂を混ぜたモルタルに、水で溶いた顔料で絵を描く技法のフレスコ画。中世ヨーロッパの教会建築で多用され、壁や天井を彩る技法として広まった。こうした歴史的な背景を持つヨーロッパでは、今でも装飾的な塗装が盛んだ。意匠性の高い塗料や塗材を造るメーカーも各国に多数存在し、ヨーロッパの塗装文化を支えている。
中でもイタリアは、その本場とも呼べる地域。ルネサンス文化が花開いたようにアートへの造詣が深い国柄もあり、「装飾的な塗料を造るメーカーが各県ごとに存在するほど、意匠性塗料の存在感が大きい」(SPIVER Japan・光宗里咲社長)と、個性的なメーカーが群雄割拠している。
そのイタリアにおいて、装飾用塗料のリーディングカンパニーと目されているのが、シチリア島に本社を置くSPIVER社だ。2004年に発表した装飾用塗料の「ARTHE Decorative Line」がグローバルな規模で支持され、世界の著名な建築物に採用。今では60カ国以上に輸出され、装飾用塗料としての地位をワールドワイドに築いている。
日本からもこれまで、塗料関連企業などから代理店契約のオファーがあったが、すべて断ってきた。SPIVER社が大切にしている哲学や意匠性にかける思いを共有できるかといった選択眼に適う企業がいなかったためだ。
そして今回、西洋左官の技術をいち早く取り入れた技術屋集団・丸紘(神奈川県川崎市)をルーツに持つ光宗里咲氏が初めて国内総代理店契約に成功、2023年秋にSPIVER Japanを設立した。塗装や左官に精通した技術力と、SPIVER社の思いやその製品に対するリスペクトで共鳴、SPIVERファミリーとして迎え入れられた。
トレーニングアカデミーが好評
SPIVER社の製品の特徴について光宗社長は、「100%イタリア産の原材料にこだわっていること」ときっぱり。塗料や塗材による最高の意匠を追求するため、自社で吟味できる原材料でなければならず、輸入原料などは一切使わないという。イタリア産の最高品質の石灰を使用した「ARTHEスタッコシリーズ」などはその代表例で、「イタリア製をうたっていても他国から原材料を調達している塗料メーカーが多い中にあって、100%イタリア産を貫いているのはSPIVERだけ」(同)と信頼が厚い。
こうした、ものづくりへのこだわりは、生命線とも言える意匠性や表現力の違いになって表れるようで、昨年SPIVER Japanが出展した建築系の展示会ではいずれも反響を呼び、多くの引き合いが寄せられた。
ただ、こうした反応に手応えはつかんでいるものの、拙速に進めていくつもりはない。SPIVERならではの意匠性と魅力を引き出す"塗り手"の育成こそが事業の肝と捉えているためだ。
同社は昨年からSPIVER トレーニングアカデミー(実技講習)を開いて塗り手の育成に着手。毎回少数の受講者に絞った施工研修なのが特徴的だ。「とにかく材料にじっくりと触れて頂きたいので数を絞り、カリキュラムも詰め込まず、受講者の表現力を引き伸ばす研修を心がけています。このため、特殊塗装などのスキルをある程度持った方を対象にしており、塗り手の感性やテクニック、表現力と共振し合って高みを目指すのが当社の方針。それが本国のSPIVER社の方針でもあるのです」と塗り手との連帯を重視する。
取材当日に研修を受けていたペインターの男性は、「これまでにも他の特殊塗料の研修を受けたことがあるが、施工手順など決まり事が多くて窮屈な感じがあった。その点SPIVERは自由度が高く、表現の引き出しがどんどん増えていくようで、やっていて楽しい。発想やテクニックを磨きたいという自分たちの思いに応えてくれる材料」と職人魂に響いていた様子だ。
なお、SPIVER Japanのトレーニングアカデミーは3日間の集中講習で費用は23万1,000円/人。4月24日~26日の開催予定の他、6月、8月、10月にも予定している。問い合わせは同社・担当(080-8885-4224)。
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