木材現しに弾み、準不燃材料認定を取得

竹中工務店、カシュー、長瀬産業、ナガセケミカルの4社は、スギCLTに難燃化塗料を塗布した内装向け準不燃材料を開発、準不燃材料として国土交通大臣認定を取得した。これにより、建築基準法が定める内装制限を緩和し、広い用途で天井及び壁の木材現しを可能にする。「木目の見える温かみのある空間デザインを実現できる」(竹中工務店)として実物件での採用を呼びかけていく考えだ。

 


木材を現しで使える透明タイプの難燃化塗料の開発に着手したのは2017年。竹中工務店自体はその2年前から開発に向けた調査を開始し、長瀬産業が竹中工務店にカシューを紹介する形で開発が本格化。長瀬産業とナガセケミカルが塗料原料をサポートし、塗料開発をカシュー、竹中工務店が材料評価・施工性を検証する原材料、塗料、施工の4社連携による共同開発がスタートした。

そして8年の歳月をかけて開発を実現したのが水ガラスを原料にした難燃化塗料。「従来の難燃化塗料に含まれる無機系難燃剤は透明性を下げる場合がある」と原料に水ガラスを採用。硬化すると透明塗膜を形成し、かつ熱を受けると発泡層を形成し、防火性能を発揮する透明難燃化塗料を開発した。中塗り塗料とともに木材と塗膜に追従する下塗り塗料と耐久性を付与する上塗り塗料を開発し、実用化に目処をつけた。

また開発時にこだわったのは、工場塗装、現場塗装両方に適応した塗料設計。現場施工で汎用性の高いローラー塗装を可能にする。

特に困難を極めたのが粘性とタレ性のコントロール。中塗り塗料がターゲットとする塗布量は、1,000g/㎡とかなりの高厚膜だが、水ガラスの粘性は低く、そのままでは必要な膜厚は得られない。

そこで生み出したのが、別添の粉末による施工前調合。粘性とタレ性のバランスを確保するため、粉末を施工前に混合し、攪拌。更にガラス繊維(粉末)も加え、塗膜強度を確保した。中塗りの前にガラス不織布を貼り付ける工程も加え、透明性と難燃性を両立した塗装仕様を構築した。

施工仕様は下地処理後、下塗り(2回)→不織布・中塗り→上塗り(2回)の計6工程。節がある際はパテ処理も行う。養生時間を含めた施工期間は3日を要する。

一方、実採用で課題となる物性面においては、屋内使用を想定した耐久性試験を実施。難燃化塗料を塗布したスギCLTに対し、30℃の高湿と10℃の低湿による100回繰り返し試験を行い、塗膜損傷や外観品質に影響がないことを確認。「空調環境下で一般的な屋内用塗料と同等の耐久性が期待できる」と耐久性試験後の防火性も問題ないことを確認し、実用化に弾みをつけた。コスト面においても、薬剤注入による不燃処理木材を下回る見込みだ。

カシューは、今後も施工性を含めた塗料開発を継続する意向を示しており、竹中工務店との協業で実績を重ね、一般木材を含めた汎用展開に弾みをつけたいとの意向を示した。

内装デザインの選択が広がる

難燃化塗料による準不燃材料認定を得たことで、薬剤流出による白華リスクを抱え、コストが高い不燃処理材を避けられるメリットは大きい。

木材を現しで使う建築物は、新国立競技場や大阪・関西万博に見られるようにシンボリックな公共施設、商業施設を中心に採用が拡大している。CO2を固定化し、脱炭素化に寄与する木材の環境特性も後押しし、"日本らしさ"や"居心地の良さ"を演出する素材として木材利用に対する関心が高まっている状況がある。

今回、材料、施工両面での検証が必要だったことがゼネコンと塗料メーカーの協業を加速させた形となったが、今後も難燃性や高耐久性をテーマにした協業開発が活発化することが想定される。

竹中工務店としても、今回の難燃化技術がスギCLTの活用に寄与し、森の産業創出、持続可能な森づくりに至る森林グランドサイクルに貢献すると訴求。木材現しを可能にする準不燃塗装工法「燃エンヌール」として設計関連や需要家に対し、広く採用を呼びかける意向を示す。



施工仕様
施工仕様
内観イメージ
内観イメージ

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