住宅塗装、次のフェーズの潮流は
超デザイン塗装時代始まる

3,000万戸近い膨大なストックを背景に市場を形成してきた戸建住宅の塗り替えマーケット。外壁基材の高品質化によるメンテナンスレスや個人消費低迷の定着、リフォーム主要客の団塊世代の後期高齢化など需要のピークを過ぎつつある。その中で、技術・技能、デザイン、社会貢献など自社のブランディングによって高みを目指す施工者の動きも目立ってきた。

建築塗装需要で大きなボリュームを占める戸建住宅の外装塗装リフォーム。3,000万棟近い膨大な戸建てストックを背景に屋根・壁の塗り替え市場を形成してきた。

塗料メーカーサイドからすると、既存の塗料販売店を通じて汎用的に流れていく市場で手離れがいい。野丁場案件のような特価要請もなく利益率もいい。全国で平準的に需要が発生し大きな波もない。このため各社ともこの市場で支持される製品戦略を進めてきた。樹脂グレードやラジカル制御による耐久・耐候性、遮熱や低汚染性、多彩模様によるデザイン性など、結果的に横並びにはなるものの他社に遅れをとってはならないと、トレンドに追随する製品展開を行ってきた。

次々と変わるプレイヤー

一方、この市場のプレイヤーである施工者サイドは時代によって大きな変遷をたどり、そしてこの先も事業環境の変化を余儀なくされそうだ。

住宅塗装リフォームが市場として立ち上がってきたのはこの20～30年ほど。ペイントハウスなど隆盛を極めた訪販会社がその圧倒的な営業力で、それまで曖昧模糊としていた需要を、市場として浮かび上がらせてきた。

悪徳リフォームなど訪販への風当たりが強まり、その存在が薄れてくるのと同時に目立ってきたのが、町場の塗装店が施主から直接工事を受注する元請化の流れだ。インターネット時代の到来とともに、それまで縁遠い存在であった住宅オーナーと直接つながることができ、良質な工事をリーズナブルに提供するとの切り口で小規模塗装店が市場で台頭してきた。

次の大きな波は2010年頃。2000年の品確法によって築後10年間の瑕疵保証を義務付けられた住宅会社、特にハウスメーカーが築後10年目の2010年頃からOB物件の品質点検を実施。この時点で塗装リフォームを行うと延長保証を行う触れ込みで需要を発生させ、メインプレーヤーにのし上がっていった。

ただ、このハウスメーカーの勢いも、最近は沈静化してきている。外壁基材の高性能化によって塗り替え時期が長期化したなどの理由もあるが、やはり施主の財布の紐が固くなったのが大きな要因。個人消費の冷え込みで価格に敏感になっている施主が塗り替えポータルサイトなどに流れ値崩れを起こしているかたち。

一方、町場の塗装店が元請展開しているケースでも形勢が固まってきた。戸建住宅の塗装リフォームだけで年商10億円を突破した群馬県のミヤケンに代表されるように、地域で圧倒的な強さを誇る、いわゆる地域1番店が各地で決まってきた。人口20～30万人の地域で特定の会社の足場（垂れ幕）が多く掛かれば、密度が高いイメージから地域ナンバーワンのブランドが強まり、「2番手以降、ましてやこれから起業するような会社はまずひっくり返せない」（市場関係者）というように形勢が固まってきている。

「住宅ストックは膨大に控えておりまだまだ懐は深い」と見る向きもあるが、外壁基材（窯業サイディング）の高機能化や消費控えの定着、リフォーム主要客の団塊の世代の後期高齢化、人口・世帯数の減少など今後の流れを俯瞰すると、需要のピークは過ぎたように感じる。

超デザイン塗装現れる

そうした中で新たな方向性も見えてきた。住宅の塗装リフォームでデザインを強みにしていく動きだ。

屋根・外壁の塗り替えは、自宅を長もちさせるためという、あまりピンとこない動機で行っているケースが多い。それをしたからといって暮らしが楽しく、便利になるわけでもなく、どちらかと言えば『あまりやりたくない』ネガティブなリフォーム。

それを「まるで別の家になった」「優越感を感じる」「外から家を眺めるのが楽しい」「壁がおしゃれになったのでガーデニングを始めたい」など、外壁の装いを一新することによって新たな価値を創出する取り組み。住人が、今、目の前で実感できる価値で塗装リフォームを新たな次元に引き上げようという方向だ。