第45回東京モーターショー
EVシフト鮮明、進化するAI

第45回東京モーターショー2017が10月27日~11月5日、東京ビッグサイトで開催された。EVシフトが鮮明化する一方で、人とクルマが対話するAI技術が進化しているのが目立つ。自動運転へ加速する日本メーカーは2020年よりEVを本格投入していく。トラックメーカー各社もEVを展示。EVのうねりが高まる中で、HVやPHVの革新も併せて進行する。一方で燃料電池車(FCV)の開発も急ピッチだ。だがデザインの傾向は定まっておらず、大半のコンセプトカーがガソリン車のデザインを引きずっている。形状やカラーデザインの革新はこれからが本番のようだ。


トヨタは走行性能の追求とコネクテッド技術を両輪に開発したコンセプトモデルを展示。またLEXUSコーナーでは5代目のフラッグシップを紹介。スピンドグリルやフロントマスクはより洗練されたデザインに。AIを活用した予防安全システムは世界トップ。内外装のカラーリングは日本の伝統的な匠の技を導入した。

コンセプトカー「TOYOTA Concept-愛」はAIを応用し、人を理解するパートナーとしてのカーコンセプトを体現してみせた。クルマが「モノ」から「者」へチェンジするとアピール。また世界で初披露となるスポーツコンセプトのボディーにマットブラックを採用し存在感を示した。注目したいのは次世代タクシーでFCV(燃料電池自動車)バージョン。

ダイハツは商用EVコンセプト「DN PRO CARGO」を前面に押し出した。低床フラットフロアー、室内高160cmで余裕あるスペースを確保。マルチユニットシステムを採用。またスタイリッシュなミニバン「DN MULTISIX」はホワイトカラーのボディーにレッドのアクセントカラーでプレミアム感をかもし出す。

日産は9月に発売した新型「リーフ」が目玉。国産初の本格自動運転システム「プロパイロット」を搭載。アクセルペダルのみでの操作で、発進、加減速、停止保持ができる。

ホンダの3台のEVコンセプトモデルに注目が集まった。EV性能とAIを組み合わせ、人とクルマを一体化させた運転感覚の世界を可能にする。特に量産EVの技術の方向を示す「Honda Urban EV Concept」は近未来モビリティの可能性を示していた。

スバルは「SUBARU VIZIV PERFORMANCE CONCEPT」を世界初公開した。VIZIVとは「Vision for Innovation」の造語で、安心で愉しいクルマづくりの方向性を示す。デザインは張り出した前後のワイドフェンダーでスピード性を主張している。

三菱自動車はクロスオーバーSUVタイプのハイパーパフォーマンスEV「e-EVOLUTION CONCEPT」をアピール。EVでもアウトドアフィールドに適した仕様で、AIを搭載しドライバーとのコミュニケーションを取ることができる。また「ECLIPSE CROSS」はスタイリッシュクーペ。同社の世界戦略、シャープなフォルムデザインが光る。

スズキは未来のコンパクトSUV「e-SURVIVOR」を世界初公開した。4モーターによる四輪独立駆動を採用し、個性的なボディーデザイン、室内のオレンジ中心のカラーリングも個性的だ。

マツダは「魂動=Soul of Motion」をデザインテーマにしたコンセプトクーペを展示。エレガントで上質なスタイルを追求。外観はなめらかで柔らかな曲線を描く。グレーシルバーのカラーデザイン。次世代コンセプトモデル「KAI CONCEPT」は車両構造技術「SKYACTIV-Vehicle Architecture」を搭載。

フォルクスワーゲンは2022年に販売を予定する「I.D.BUZZ」を出展した。マイクロバスのような外観だが、車両のコンポーネントは最新トレンドを取り入れている。次世代EVとして完全自動運転機能を備え、運転席が180度回転する。ドライバーも同乗者とおしゃべりをしながら移動時間をすごせる。

アウディはAIとe-tron技術を体現した「エレーヌ」を紹介。4輪駆動のEV・SUVで、最高出力は435ps、ブーストモード時には515psに達する。航続距離は500km以上とエンジン車に匹敵するロングドライブが可能。

メルセデス・ベンツの「Concept EQA」は2つのモーターで最大272hpを発揮するパワートレインを有し、バッテリーコンポーネントは拡張が可能。最大航続距離は400km。フロントライトはレーザーファイバーが採用され、デザイン性を高める。smartのEVバージョンも注目された。

鍵握るAI技術

日立オートモーティブシステムズは自動運転の実現に向けたモデルを展示。またVR(バーチャルリアリティ)を活用したライドシアターを設置し、自動運転での走行が体験できる。更に電動化に向けては、モーター、インバーター、Liイオン電池、効率的なエンジンマネジメントシステムを展示した。

富士通テンはクルマやスマートフォンなどがネットワーク化するモビリティ社会に向け、サイバー空間に蓄積されたビッグデータを分析、予測する様子を展示した。センシング技術、情報分析ソリューション、先進HMIの各カテゴリーに分けた先進技術を紹介した。

アルパインは近未来の車内空間を展開。感動の移動時間・空間を体験できるシアターやプレミアムスペースデザインなど。車内の前面、左右側面、天井面を巨大モニターとして、迫力ある映像が映し出されていた。

パイオニアは、コンセプト・コックピットや走行空間センサーの他、フレキシブルタイプの有機ELテールランプ・ターンシグナル、レーザースキャン、位置情報を活用したサービスを紹介した。コンセプト・コックピットはシミュレーションレベル3以上を想定し、音・光・振動を用いたHMIデバイスを搭載している。

デンソーのコーナーではVRが注目される。VRヘッドセットとセンサーを装着して4m×6mの体験エリア内を歩き回り、近未来技術を体験できる。自動運転に欠かせないセンシング技術の先進性をアピール。特に3つのキーワードである①電動化②自動運転③コネクテッドでの技術提案をしていた。

ボッシュは、走行データをもとに車両の故障予測を行い、部品交換を促す通知を発行する「故障予測サービス」の展示の他、車両のECUソフトウェアを無線でアップデートするシステムをアピール。コネクテッドカーの利点を具体的に提示した。

塗料メーカーで唯一出展したイサム塗料は"イサムカラー"を前面に打ち出し、クルマとカラーの密接な関係性をアピールした。特に既存のボディカラーや室内カラーにはない色域のカラースキームに力を入れているのが印象的だ。カラーリングでクルマの楽しさはもっと増すと訴える。

EVかFCVか

東京モーターショーは出展企業も入場者数も減少させている。アジア最大のモーターショーの開催は中国に移っており、今回のショーでも米国・ビッグ3、韓国・現代自動車の出展がなく、やや盛り上がりに欠けている面は否めない。またドイツのカーメーカーがEVシフトを鮮明にしているのに対し、日本メーカーはPHV、FCVへの対応で、EVに的を絞っていない。



Concept-愛(トヨタ)
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アウディのEV「エレーヌ」
アウディのEV「エレーヌ」
2022年に発売されるI.D.BUZZ(VW)
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商用EVコンセプト(ダイハツ)
商用EVコンセプト(ダイハツ)
人にやさしいタクシー(トヨタ)
人にやさしいタクシー(トヨタ)
VR(バーチャルリアリティ)で体感
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駆動技術の進化
駆動技術の進化
EVスケルトンモデル
EVスケルトンモデル
イサムはカラーの世界をアピール
イサムはカラーの世界をアピール

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