IoT化、コンサル型工業塗装の確立へ

工業塗装専業者のヒバラコーポレーション(本社工場・茨城県、代表取締役社長・小田倉久視氏)は来年1月に塗装技術を分析・運用できるソフトウエアの販売を開始する。合わせてIoTを活用した工業塗装のコンサルティング業務を来年から本格的にスタートさせる。技術継承や人材育成の停滞に直面している現場に対して、同社がこれまで現場で培いデータ化した塗装技術ノウハウを活用して塗装ラインの運営支援を行う。


塗装技術はさまざまな条件が重なっているため数値化及びデータ化は難しいと言われている。塗料の種類によって粘度などの特性が異なる上に、気温や湿度が塗装に及ぼす影響は大きいため、工業塗装の現場では塗料や気候に合わせてシンナー希釈を変えたり塗装条件を調整したりして塗装肌の仕上がりを安定させている。

同社が開発したソフトウエア「HIPAX(ハイパックス)」シリーズはこうした塗装技術の分析及び運用を可能としている。例えば塗料調合ではPC上で使用する塗料の種類や製品名を選択し、その日の気温と湿度を入力すると最適な塗料粘度が表示される。従来、現場の"感覚"への依存度が高かった塗装技術をデータで管理できるため、作業の標準化につながり品質の安定化が図れる。

これには同社がこれまで実作業で培ったノウハウのデータ化がもとになっており、塗料1種類ごとに最適な粘度分布を作成してきた。その日の塗装条件と艶や膜厚など塗膜品質との相関関係をデータとして積み重ねることで、塗装の最適化を図っている。

同社では塗装品の不良率は0.02%と非常に優れた数値を保持しているが、塗装の最適化を追求する姿勢によるものと言える。

小田倉社長は「HIPAXは工業塗装現場での実績値とマッチングしたもの。効率化や品質管理はもとより塗装技術の伝承に役立ててほしい」という強い思いがある。このソフトウエアは既に2社の塗装ラインで実績があり、来年から広く展開していく方針。新開発品は来年1月に東京ビッグサイトで開催される「第3回スマート工場EXPO」に出展し披露する。

マザー工場で条件出し

HIPAXシリーズは上述の"技術"に関するもの(HIPAX Ⅱ)の他に生産管理システム「HIPAX Ⅰ」があり、こちらに関しては既に市場展開しているが、HIPAXシリーズを活用することで遠隔地での塗装ライン運営を目指している。つまり工業塗装会社による塗装ラインのコンサルティングだ。

具体的にはロボット塗装導入、前処理の遠隔オペレーション、塗装プロセス管理などを体系的に支援することを想定している。

例えば、今後ますます人材確保が困難になると見られる中で普及が期待されるロボット塗装導入支援の内容は、まずはマスターアームを用いて熟練工にスプレー塗装をしてもらい動きの位置データを取得する。そのデータを自社専用ソフトでデータのトリミングやコンパイルを行い、各主要ロボットメーカーのティーチングデータとして変換しロボットへインプットする。これにより熟練工のスプレー塗装技術が塗装ロボットで再現される。

また、前処理の遠隔オペレーションとは、前処理における作業環境を監視できるカメラを現地に設置、必要に応じて生産管理システムで作業工程をデータ化する。指示が必要な事態が発生した場合には、マザー工場の遠隔オペレーションを受けることができる。

マザー工場とはヒバラコーポレーションの本社工場であり、ここが一般的なコンサルティング会社とは大きく異なる。同社では工場内に自社で使用する塗装ラインとは別に専用の塗装ラボを設けており、フルに活用していく意向。塗装の最適化を図るための条件出しもマザー工場で行い、そのデータを顧客の塗装ラインで再現する。

今後はAIの活用も見据えている。塗装品のワーク形状を画像で自動認識し、どのような塗装パターンで狙うのが最適なのかを自動的に導き出すシステムの開発に着手している。工業塗装会社として新たなステージへと突き進んでいく。



ヒバラコーポレーション
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コンサル型工業塗装のネットワークシステム
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