ベトナム人を積極登用、管理者育成

戸崎産業(本社・兵庫県高砂市、代表取締役・戸崎寿人氏)は人材確保としてベトナム人を積極的に雇用している。ここ数年は研修生の枠にとどまらず正社員として定期採用し、管理者に育成していく方針。戸崎社長は「次の世代へつなぐことを考えると国籍はそれほど重要ではない。優秀な人材を確保し育てることが重要」との意向を示す。


戸崎産業が外国人研修生の受け入れを開始したのは今から11年前。人手不足の問題を抱え、家庭の事情などでパートタイマー従業員が複数同時に休むこともしばしばあった。そうなると生産ラインを止めざるをえない状況に陥ってしまう。

その対策が外国人研修生の受け入れだ。「安い労働力を確保するという考えではなく、あくまでラインを安定稼働させるため。実際、住居など研修生にかかる諸経費を考えると日本人のパートさんを雇った方が安い」(戸崎社長)。

それ以降、継続的に受け入れを行っており、現在はベトナム人女性9名が研修生として働いている。勉強会やレクリエーションなどの活動を多く催すことで、社内の雰囲気も明るく活気づく効果も表れている。

同社に限らず最長3年という雇用期間が限定される外国人研修生の受け入れを行っている塗装工場は多い。その場合、労務費を抑えて労働力を確保する意味合いが強い。ただ、同社では正社員としての雇用、育成にも取り組んでいる。ワーカーではなく管理者への成長を期待する。

6年前、初めて2名を採用。日系の大手メーカーのメンテナンスリーダーと大学新卒者を正社員として採用した。

「技術継承を含めて次の世代へつなぐことを考えると、当初は日本人にこだわる部分もあったが今はない。実際、試験をやるととても優秀で、仕事の吸収力も優れている」(戸崎社長)として管理者へと育成していく方針だ。

賃金待遇は「日本の大卒者と同等」であり、"安く"優秀な人材を確保するという考えではない。そうしたベトナム人社員は現在7名になる。新たに採用した女性はベトナムのトップクラスの大学の新卒で、ISOや品質・生産管理を専門に勉強していた。同社においてもその専門性を生かした活躍を期待している。

「家族を日本に連れて来る者や日本で結婚し家庭を持っている者もいる。定年まで働くと言ってくれるのは嬉しい」と戸崎社長。これまでの経験から受け入れの体制が整い、彼らにとって働きやすい環境が確立している。国籍に関係なく優秀な人材を育成し成長を目指している。

粉体強化、ブースを増設

塗装設備は、リン酸鉄皮膜処理との一貫塗装ラインが2ライン、精密部品用の防塵塗装室、自動車関連部品の絶縁粉体塗装設備を有する。塗装ライン以外では、アルカリ脱脂+リン酸鉄皮膜処理ライン、3価クロム皮膜処理ラインの専用設備を持つ。

このほど、粉体塗装専用ラインを新たに設けた。従来、溶剤塗装との併用ラインで粉体塗装を行っていたが、「提案に注力してきたこともあり、ここ1~2年の新規案件は粉体塗装が特に多くなった」として体制強化を図った。

塗装設備は旭サナック製を採用。トリボ式自動ガンを備えたレシプロ2基を並べており、最初のレシプロ基を通るとワークが回転し反対側面を次のレシプロ基で塗装する流れ。その後、ハンドガンで後補正している。ワークサイズはH550mm×D600mm×W450mmまで対応可能。

塗装機はトリボ帯電方式ガンを採用。「仕上がり肌が良かった。作業的にみても塗着効率が良く生産性が優れている。被塗物の溶接部分でも静電反発することがないのも良い」との評価。

取り扱い営業品目はさまざまあり、特定顧客への依存度が少ない。顧客の産業分野が多岐にわたるためリスク分散にはなっているものの、その分扱い製品の形状や仕様もさまざま。複数の前処理や溶剤塗装、粉体塗装を組み合わせた仕様を提案し、量産体制を整えることで競争力を付けている。

品質管理についても自社で蛍光X線分析装置やマイクロスコープを持ち、物質の分析や表面解析を行う。不良が発生したとき、塗装管理に問題があるのか、もしくは素材自体に要因があるのかを正確に判断するためだ。

不良発生は毎日、分析・数値化している。工程管理だけでなく季節変動も考慮することで効果的な対策が打てる。再塗装したときのコストを計算し、損失を金額として明示する。それらを全社員で共有化することで、取り組み意識を高めている。

戸崎社長は「新規案件が10件増えても、海外移管などで減るものも同じくらいある。常に新しい仕事を受注しなければならず、何事にもチャレンジして成長していきたい」として、人材育成とともに設備体制を強化する方針。



ベトナム人を積極雇用
ベトナム人を積極雇用
戸崎寿人社長
戸崎寿人社長
粉体塗装ラインを新設
粉体塗装ラインを新設
塗装前のエアブロー工程
塗装前のエアブロー工程
絶縁粉体塗装
絶縁粉体塗装

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