生産性向上と不良率低減を徹底

塗装専業者のトップ工業(本社・埼玉県川越市、社長・髙橋正氏)は塗装ラインの生産性の向上、不良率削減に重点を置き、改善に取り組んでいる。また、現在では自社で使用しているものを製品化し、販売するなどメーカーとして展開も行っている。


現在トップ工業は従業員数64名、主に自動車関連製品の塗装を行っている。川越市と美里町に工場を有し、川越工場では粉体塗装、溶剤塗装ライン1ラインずつ、美里工場では粉体塗装、電着塗装、上塗り塗装(溶剤系)各1ラインを有する。生産性向上、無駄の削減に改めて取り組むきっかけは「例えば製品を塗り直すのは、塗料のコストだけでなく時間も無駄になってしまう。コスト要求が厳しく、今後市場が縮小する中で、自分の工場でコストを削減していかければならないという危機感を持ったのが最初です」(髙橋社長)と説明する。

そこでまず行ったのがハンガーの吊り数を増やす取り組み。時間当たりの出来高を上げることで効率的に塗装する方法を試した。吊る製品が増える分、取り外しや引っ掛ける作業を素早く行わなくてはならないため、それに伴いハンガーも塗装しやすく外しやすい、製品が落ちにくいものを試作していった。また無駄を削減するという観点から、塗装する製品を交換する際の塗装設定の切り替え時間を狭めることで作業の効率化を図っていった。

その中で、社員の意識にも変化が出てくる。自分たちでどう効率的に作業を行うかを考えて提案。作業場のレイアウトの変更を行うなど、今では梱包材の準備工程を従来の10分の1の時間でできるようになった。

また、2年前から主要なスタッフにはトランシーバーを持たせている。塗装後の製品が出てくる正確な時間、作業の人数が足りない、急遽割り込みで製品を入れるときなどに連絡を取り合い円滑なライン運用に努めている。「2年前に人の入れ代わりなどさまざまな要因から必要に迫られる形で実際に使い始めた。現在では効率が上がってきており、ラインの一体感も高まった」(髙橋社長)と話す。

一方で、「口頭の伝達に頼りすぎてしまい、何か問題が起きたときに指示出しの根拠が見えてこないと解決にならない」ことから、新たにモニターを導入し製品の流れを視覚的につかめるようにする。現在は「最終的なマスター入力の段階」で、それが終わり次第導入する予定としている。

更に、自社で無駄削減や効率に寄与したものを製品化した。今まで塗料ロスの低減に寄与するレシプロやゴミキャッチャー「SHU-HEI」など、生産性向上や無駄を削減する製品を塗装専業者向けに販売している。中でも昨年7月に販売を開始したゴミキャッチャー「SHU-HEI」は、同社で同品に切り替えデータを収集したところ、1カ月で3割のゴミ・ブツ低減効果があったという。「ゴミキャッチャーは採用してくれる会社も増えており、これから少しずつ採用実績を積み重ねていきたい」(髙橋社長)と今後の飛躍に期待する。

同社が生産性向上や無駄を減らす取り組みの中で見えてきたものは、作業の標準化の必要性。「現在は厳しいコストや品質要求の中で収益を上げなければいけない。そのためには『その人でなければできない』という仕事を少なくすること。今後更に人材が採用しにくくなる中で、高齢者やパート社員の方でも作業しやすい方法を考えながら、ノウハウを蓄積していく」(髙橋社長)と話す。

加えて、同社では今年から年に1度、社員からの優れた改善提案には社長賞を与えるなど、現場からの意見を積極的に取り入れていく意向。「自動車メーカーの組立ラインのような効率性の高い工場の取り組みを自分たちの工場にどう取り入れるかが今後の課題。仕事のやり方を変えるという意識で、作業要領を適宜見直し改善する。加えて、スタッフに研修や同業他社の工場を見せることで刺激となり、現場から更なる改善提案を促していくことが必要」(髙橋社長)との認識だ。

また2012年にM&Aを行った和光塗装工業所とも連携を取りながら、自動車部品以外での受注も進めていきたい意向。特定業種の仕事の依存率を下げながら、さまざまな製品を受注できる体制をつくっていく。



川越工場外観
川越工場外観
ゴミキャッチャー「SHU-HEI」
ゴミキャッチャー「SHU-HEI」

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