長物アルミ材向けに3.5m縦吊り塗装ラインを新設

野村アーテック(本社・東京都品川区、代表取締役・野村敏夫氏)はエレベーターなど大型な建築金物の対応強化を目的に新工場を建設、4月から本格稼働した。前処理としては、今後を見据えてジルコニウム化成処理を導入し環境対応を整備している。


野村アーテックは東京都北区で創業した歴史があり、本社と東京営業所は東京都品川区に構えている。工場は昭和39年に現在の茨城県水戸市に移設し、事業拡大に伴い工場を増設している。これまで3工場が稼働し、このほど新たに水戸第4工場を新設、成長に向けた新たな段階に入る。

同社はエレベーターやエスカレーターなど建築内装パネルを得意としており、日立製作所をはじめ東芝エレベーターや三菱電機など大手メーカーと取引がある。近年では、車両部品や店舗什器、工業部品などの扱いも増えている。従業員数は水戸工場と東京営業所で計50名。水戸工場の生産能力は約1,000㎡/日。売上高は年間10億円。

アルミ材拡大見据え、
ジルコニウム化成処理を導入

新工場の新設の目的について、野村社長は「生産性を上げるというよりも品質向上と環境対応の意味合いが大きい」と述べる。

エレベーターをはじめ建築内装パネルは大型化する傾向がある。従来、3つの工場・計5ラインの生産設備を有する中で、「生産キャパとして問題はないが、大型品の量産性を高めたい」として、今後の大型品の増加を見据えて設備体制の強化を図った。

新工場は93m×19mの大規模なスペースを確保。前処理設備と自動コンベア搬送の塗装ラインがあり、塗装ラインは縦吊り3,500mmまでのサイズが可能になっている。

塗装ブースは自動塗装(10m)と手吹き塗装(4m)の2ブースが並び、自動塗装ブースにはランズバーグ製の4丁ガンレシプロを置き、手吹きブースでは下塗りや前補正を想定している。

前処理としては日本シー・ビー・ケミカル製のジルコニウム化成皮膜処理を採用した。ディッピング処理槽は長さ4,000mmまで対応可能な設計。

同社では鉄素材はリン酸亜鉛皮膜処理を行っているが、アルミ材は脱脂のみの前処理であった。今後、アルミ材の使用拡大を見据えてジルコニウム系処理を導入し本格的な前処理を実施する。ジルコニウム化成皮膜処理では、スラッジ発生がほとんどなく、表面調整も不要という特長も魅力に映った。

アルミ材は鉄よりも軽量化が図れることからさまざまな分野で使用量が増えており、同社の取り扱いも増えてくることを想定する。長尺のアルミ材を量産的に化成処理できることは市場での差別化につながる。

加えて、同社は意匠性パネルを自社製品として市場展開しており、この事業の強化を図っていく。この素材がアルミ材だ。

野村英起専務取締役は「意匠性内装パネルは国内だけでなく海外での需要が見込め、輸出を考えたときは軽いアルミ材が適している。その場合、品質面で脱脂のみではこころもとない。顧客が塗装後にカットや曲げ加工するときに剥がれる恐れも懸念される。密着性や防食性を強化する上でも化成皮膜処理は必要」との見方を示す。

同社は塗装と柄付の手法を組み合わせた特殊高級塗装を得意としている。下塗り、中塗り、クリヤーの塗装工程の間にパテやサンディング、印刷作業を合わせると7~10工程を経た塗装仕上げを行っている。

顧客がデザインを決めて同社が仕上げるという流れで事業を進めてきたが、最近では同社からデザインを提案する動きも出ている。自社製品としての展開も強化していく方針だ。

1年半前には東京都内にデザインセンターを開設。ショールーム兼商談スペースとして活用している。さまざまな意匠デザインのサンプル板を作成し、設計事務所やデザイン事務所へ営業活動を進めるなど、主導的な動きを強めている。

野村専務は「内装パネル需要は東京オリンピックまでは期待できるが、それ以降は量的に拡大するとは思っていない。長期的な視野に立ったとき、これまで培った特殊高級塗装が強みになるはずだ。国内だけでなくグローバル市場を目指していく」意向を示す。



水戸第4工場、4月から本格稼働
水戸第4工場、4月から本格稼働
野村英起専務㊧と野村敏夫社長㊨
野村英起専務㊧と野村敏夫社長㊨
自動塗装ブース、縦吊り3.5m対応
自動塗装ブース、縦吊り3.5m対応
ジルコニウム化成皮膜処理槽
ジルコニウム化成皮膜処理槽
意匠性内装パネル
意匠性内装パネル

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