塗装専業者の春日井金属塗装所(愛知県春日井市、代表取締役社長・大久保清司氏)は従来、強制乾燥していた塗装工程を常温乾燥に変更することで省エネ対策を実行している。現状は40%の割合を100%常温乾燥への切り替えを達成することで、次世代塗装工場を目指す。

塗装工場を運営する中で大久保社長は「昨今のカーボンニュートラルの流れに乗ってエネルギー削減に取り組んでいる。コスト削減にもつながるので、エネルギーを使わなくてよいのならそれに越したことはない」としてさまざまな取り組みを行っている。

その1つが乾燥工程を強制乾燥から常温乾燥に切り替えることで、乾燥炉のエネルギーを不要にする取り組み。

同社では溶剤塗装と粉体塗装をメインに複数の塗装ラインの体制で事業を展開する。溶剤塗装の中では2液ウレタン塗料の使用量は多く、通常は乾燥炉で80℃×20~30分の設定で強制乾燥を行っている。

この強制乾燥工程について、乾燥炉を使わず常温乾燥で塗膜を硬化させることで省エネ効果を狙った。2液ウレタン塗料にはメーカーによって常温乾燥する場合の乾燥時間が示されており、塗料によって24時間であったり48時間であったりと異なる。

そうした乾燥条件を考慮した上で、同社が必要な硬化時間を探った。「当社の塗装品は小物が多く梱包して納品するが、その作業工程の中で品物に傷が付かない硬化時間はどのくらいか。データ取りを行って必要な硬化時間を導き出した」(大久保社長)。

一昨年の11月からトライを実施。製品ごとにデータ検証することで、2液ウレタン塗装のうち約4割を常温乾燥に切り替えることができた。結果、昨年8月に1つの乾燥炉を撤去した。ガス代は「およそ月に13万円ほどは削減できている」と省エネ効果が見られている。

常温乾燥に切り替えたときに課題となるのが生産性と乾燥中の塗装品の置き場確保。強制乾燥であれば30分で済んだ時間が、常温乾燥となると夏場では24時間かかってしまう。

ただしそこは「各工程の作業を見直し、夜中に乾燥する流れを組むなど段取りを付けることで、生産性が悪くなっているとは感じない」と大久保社長。

置き場については撤去した乾燥炉のスペースを活用することで問題をクリア。ただ、2液ウレタン塗料の場合はすべて常温乾燥に切り替える考えであり、今後数量が増えると更にスペースが必要となる。そこで乾燥室として新たな倉庫の建設を予定している。

今後は水性化に取り組む計画だ。環境に配慮するとともに、水性塗料であれば消防法の対象から除外されることで保管料が不要になったり、一般環境で保管できたり、メリットが大きいとの見方を示す。