塗料商社のオーウエルは塗膜形成技術を生かした事業を推進することで需要創造を図っていく。

同社では販売業とともに塗膜形成技術の開発に取り組んでいる。塗膜形成部は塗装技術グループと技術開発グループに分かれ、塗装技術グループは塗装現場で起きている問題に対して、設備や塗装方法の最適化を図って解決することが主な役割だ。

一方の技術開発グループは5~10年先を見据えた上での新たな価値創造を目指した活動を行う。特に近年では工業塗装を取り巻く環境の変化が激しくなっており、「ものづくりを根底から変えるような技術を開発する必要がある」(塗膜形成部技術開発グループリーダー・橋谷田晃氏)。

その"塗膜形成技術"を活用し形にしたのが、塗膜に微細な溝構造を施工するリブレット技術だ。

リブレットとはサメ肌形状をヒントに考案された微細な溝構造で、航空機業界では飛行時の抵抗を軽減することで知られている。

同社がJAXAと10年にわたり共同研究してきた技術で、今般JALとの飛行実証実験で良好な結果を得た。社会実装に向けて大きく前進している。

ここでポイントとなるのが塗膜にリブレット形状を施工したこと。従来フィルムにリブレット加工を施して機体に装着する技術はあったが、重量や耐久性の観点から課題も見られていた。

同社の開発技術では、塗膜に形状を施すため塗膜そのものの性能が担保される。その上で新たな機能を付与するもの。航空機の厳しいスペック基準をクリアした塗膜(塗料)を維持することは重要だ。

この技術の核となるのは材料技術、工法、表面形状コントロール。この3つの技術によって既存塗膜にない機能を付与することを可能とした。

具体的に見ると、今回の"リブレット技術"では航空機塗料(材料)を使い、塗料をフィルム化し圧着する(工法)ことで塗膜表面にリブレット形状を施す(表面形状コントロール)。

今回のケースは航空機という対象物の形状やサイズに最適な"塗膜形成"を行ったということで、例えば工法に関しては「他の工法もある。塗料との関係性もあり、どの材料を使用するかで変わってくる。プロジェクトごとに最適化を図っていく」(橋谷田氏)。

現状でもいくつかの案件が進んでいるという。リブレット形状技術についても、自動車や船舶など応用展開していく戦略だ。

塗料や塗装によってモノの表面形状をコントロールすることで新たな機能を発現する。JALとのプロジェクトはあくまで第1弾との位置づけであり、「今までの塗装の在り方とは別軸の柱」(橋谷田氏)として、事業の拡大を図っていく。