拡大続けるベトナム粉体市場
建設ラッシュで建材・家具がけん引

ベトナムの粉体塗料マーケットが拡大を続けている。近年、ベトナムは安定して高い経済成長率を維持し、都市部では高層ビルやマンションの建設ラッシュに沸く。それに伴って建築内外装材や鋼製家具向けが粉体塗料の需要増をけん引している。1万8,000~2万トンと見られる粉体塗料規模は更なる増加が予想されている。


ベトナム最大の経済都市であるホーチミン市中心部では高層ビルの建設工事現場が数多く見られる。その建築内外装材にはカーテンウォールやサッシなどアルミ建材が採用されており、塗装はポリエステル樹脂系粉体塗装が施されるケースがほとんどだ。

ベトナムでは金属焼付塗装において溶剤塗装よりも粉体塗装が使用されることが多く、「現地で溶剤系ふっ素樹脂塗料を調達しようと思っても難しい」(日系塗装会社)という。アルミ建材向けでは高耐候性ポリエステル樹脂系が普及している。

ベトナム塗料・インク工業会によると、数量ベースで粉体塗料の占める割合は全体の4%。市場規模は1万8,000トン~2万トンと見られる。需要分野としては、建材、鋼製家具、一般産業、自動車部品(ホイール、スプリングなど)、家電、建機・農機、水道管、塗装専業者向けなどがある。特に近年の建設ラッシュにより建材、鋼製家具向けの伸びが目立つ。

粉体塗装が普及している背景として、日本のように"溶剤塗装から粉体塗装への切り替え"ではなく、"初めから"工業製品の焼付塗装は粉体塗装という考えがあるからだ。

粉体塗料の供給体制も整っている。現地塗装会社や塗料メーカーに聞いたところ、粉体塗料の調色は1週間で対応可能という。ミニマムロットは200kgほど。1カ月以上、繁忙期では数カ月もかかってしまう日本とは納期スピードが大きく異なる。使う側としても調達に不便さはない。

粉体塗料を展開するメーカーは外資系ではアクゾノーベル(オランダ)、ジョータン(ノルウェー)、タイガードライラック(オーストリア)、PPG(アメリカ)など。日系塗料メーカーは日本など海外からの輸出で販売しており、マーケットシェアはわずか。

ローカルメーカーも事業展開しているが、「外資系と比べて品質は良くない」(日系塗装会社)との見方が強い。塗料単価については「安いものでキロ300円(ポリエステル樹脂系)」の低価格品も流通している。

そのため日系の粉体塗装工場では外資系粉体塗料を使用し、塗装品を日本に輸出するパターンが多い。ローカル市場向けではスペックが高すぎてコストも合わないのがこれまでの実状であった。しかし、右肩上がりで経済成長を続けるベトナムでは高品質・高グレードの要望も出てきており、日系企業がローカル市場向けに事業展開を強化していく流れがうかがえる。

生産能力1万2,000トン/年
アクゾノーベル

ベトナムの粉体塗料市場で25%のトップシェアを握るのがアクゾノーベル。同社はホーチミン市に隣接するドンナイ省に粉体塗料製造工場を持つ。15年前に設立したこの工場はベトナム国内だけでなく、東南アジア唯一の粉体塗料製造拠点でテクニカルセンター機能も兼ね備えている。

製造能力は年産1万2,000トン。ここから東南アジアの1,000を超えるユーザーに販売している。製造ラインは6ラインありボンディングメタリック装置も備えている。従業員数は170名。
調色のリードタイムは約1週間、ミニマムロット200kgで対応可能という。製造ラインが6ラインと特別多いわけではないが、工場の稼働が2交替制の24時間体制であるため、対応能力は高い。

製品ラインアップとしては一般的な各種グレード品の他にも木材向けや低温硬化、薄膜・平滑タイプ、耐熱タイプなど機能性バリエーションも豊富。ベトナム市場に対しては、アルミ建材、鋼製家具、一般産業向けが主力となっている。樹脂系ではポリエステル樹脂系(高耐候含む)が約40%、エポキシ/ポリエステル樹脂系のハイブリッドが約30%、その他30%の割合。

同社としてもベトナムの粉体塗料市場を成長事業と位置付けている。現在の販売数量はひと月に約400トン。年々増加してきた経緯があり、2005年約100トン、2007年約200トン、2014年約300トンと堅調に推移している。次年度については「建物の建設により建材やオフィス家具などで需要が増えている。10%以上の増加を計画している」(同社・営業担当)。



建設ラッシュに沸く
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