粉体市場、供給力強化で課題克服へ
汎用工業への広がり

粉体塗料市場の拡大の流れに勢いがつきそうだ。日本ペイント・インダストリアルコーティングス(NPIU)が粉体塗料の生産能力を2倍に引き上げる方針を打ち出したことは市場にインパクトを示した。粉体塗料トップシェアのNPIUが供給能力を高めることで、ボリュームゾーンである"汎用工業"で溶剤塗装から粉体塗装への置換の動きが予想される。ポイントは「売りやすさ」と「使いやすさ」の認知だ。


粉体塗料市場規模は、経済産業省の統計によると平成29年の生産数量は3万5,092トン、販売数量は4万7,366トン。市場規模は増加傾向にあるものの成長率は5%以下を推移しており、環境対応や作業性などのメリットを考れば物足りなさが感じられる。

粉体塗料のメイン需要は鋼製家具や電気機器、道路資材などメーカーの内製ラインとなっており、中小規模の塗装専業者にも広がってはいるものの少ないのが現状だ。メラミン焼付やアクリル焼付といった金属塗装の"汎用工業"分野の潜在需要は大きい。

工業塗装における汎用工業の裾野は広くボリュームは膨大であり、今回のNPIUの生産能力の強化の狙いはこの需要の取り込みが大きい。「ユーザーが求める性能、品質、コストを満たした上で供給力を確保する」(NPIU・塩谷健社長)との意向を示す。

9億円の設備投資を実施するNPIUほどではないものの、近年は他の塗料メーカーでも設備の一部を改造・増強したり、海外拠点からの調達を積極化させたりして各社は供給力の強化を図っている。

その上で、粉体塗料の普及に欠かせないのが販売店の力だ。特に汎用工業のユーザーとなる塗装専業者向けの展開では、販売店が売りやすい(提案しやすい)製品であることが重要となり、品質だけでなく単価や納期、最小ロットなどで対応力が求められる。

言い換えると、ユーザーにとっては使いやすい製品である必要がある。溶剤系と比べて、塗装作業性や作業環境が大幅に改善できる粉体塗料を使いたいと考えている塗装専業者は多い。しかし、調色納期や発注ロットの問題から溶剤塗料のように小回りが効かず顧客(加工業者など)に提案しにくいとの声は根強い。

この先、粉体塗料の供給能力が全体的に高まることで既存の課題が徐々に解決していけば、粉体塗料が「売りやすい」「使いやすい」ものと認知され普及につながっていくはずだ。

粉体塗料の市場規模が拡大すれば、塗料メーカーの更なる設備投資につながり、自ずと供給安定化が進みユーザーが使いやすくなる。需要活性に向けた供給側の動きが始まった。



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