ラバーディップでナンバーワンに

国内で初めてラバーディップ専門店が誕生した。愛知県名古屋市にある「ピログレス」だ。大田弘樹社長は「初の専門店としてラバーディップの施工台数も売上もナンバーワンになりたい」と意気込む。事故需要ではなく、ボディカラーを自分好みにしたいというクルマ好きからの需要を取り込んで県内をはじめ県外からもカーオーナーがやってくる。新しいスタイルのボディショップとして存在感が高まっている。大田社長に話を聞いた。


同社が扱う「ラバーディップ」はカスタムカーショップのジェットストロークが製造・販売する、塗って剥がせる塗料。メタリックやパール、カメレオン柄など60~70色とカラーの豊富さが特長。施工、販売会社は全国に60ほどあり広がりを見せている。

同社は初のラバーディップ専門店としてオープン。現在では1カ月に2~4台の入庫を確保しており、3カ月先まで予約が入っている状況。カスタム好きやクルマ好きからの「自分だけのオリジナルのクルマにしたい」ニーズに応えている。大田社長は「フィルムと違い継ぎ目がなく、シームレスな膜をつくれるところがカーオーナーに評価されているところ。全塗装の需要も多く1人ならば数台こなすことで事業としても成り立つ」と話す。

同社では営業活動は一切行っておらず、口コミやSNSで需要が広がっている。その他、3年連続でカスタムカーイベント「オートサロン」に出展。今年はポルシェパナメーラをスカイブルーとホワイトにあしらった。またアーティストとコラボレーションし、ボディにはメヘンディの風合いで描かれた絵に、動物をさりげなく入れる遊び心も加えた。「独自の世界観を演出して、新しい視点から見られるクルマを出していきたい」と独創性に磨きをかける。

大田社長はもともと父親が創立した鈑金自動車工場・光栄自動車で鈑金塗装の技術者として勤務していた。ジェットストロークの佐々木社長を通じてラバーディップと出会い、今までの鈑金塗装では見ることのなかった事業の明るさを感じた他、新しい設備の導入などもないといった理由から光栄自動車でも導入。同社内でラバーディップの施工を行っていた。しかし、通常業務に加えての施工は塗装ブースを使える時間が限定されるなど時間的に難しいことを実感。「施工店として認定されてからは通常業務が終わってからや連休などで対応していた。需要はあるのに施工する時間がないという状況だった」(大田社長)と当時を振り返る。

それから徐々に認知が向上したことに加え、施工の時間を確保するために独立を決意。専業でラバーディップを施工する工場がまだないということから初の専門店として開業した。「施工から見積もり、イベントの出展などすべての業務を1人で行うのは大変だが、人がいたときのありがたみが実感できたのは良い経験」と前向きだ。大田社長はラバーディップが普及しきる前に細かいノウハウを蓄積し、老舗として技術をアップグレードさせていく。

同社の事業は事故車の修理と違い緊急性がなくカーオーナーが施工を待ってくれるため、施工の計画が立てやすく、台車を貸してほしいという要望もほとんどないというメリットもある。また、同社ではラバーディップを入口に、一般の修理需要の取り込みにもつなげている。「従来の鈑金塗装工場への来店は、クルマを修理するために入庫するというネガティブな理由。対して、クルマをドレスアップしたいというポジティブな理由でカーオーナーが当社を訪れてくれることが嬉しい」(大田社長)と微笑む。

現在はクルマのドレスアップだけでなく、ウォーターサーバーへ塗装してほしいとの要望もあり、自動車以外の需要も出てきている。「ラバーディップにはまださまざまな可能性を感じている」(大田社長)と同社でも新たな需要をつくっていく。

若い人たちに夢を与えたい

大田社長が独立したのには若い鈑金塗装技術者に夢を持ってもらいたいという理由がある。「自分たちの持っている技術はさまざまな可能性を秘めている」と話す大田社長。鈑金塗装工場は先進安全自動車の台頭などで事故が減っており、従来の業態だけでは生き残ることが難しくなっているのが現状。従来のクルマの修理だけではなく、その技術を軸に自身が新たな展開を行うことで、若い技術者たちにアイデアで新しい需要を創造してほしいと考えている。太田社長は「一般の鈑金塗装と比べ、1台あたりの単価も上がる。ラバーディップでなくても、技術を適正に評価してもらえる環境を自分で作り出すことができるということを示したい」と強調する。

同社がこれからの展開として重要視しているのが若い技術者の採用だ。大田社長はこれまでの鈑金塗装工場での経験から、作業を専業化すると視野が狭くなってしまう懸念があるため少数精鋭の技術者集団を目指す。「さまざまなことを経験してもらうことで、広い視野を養うとともに、できなかったことができるようになる喜びを実感できるような会社にしたい」(大田社長)と会社のビジョンを示す。同社では今年は若い人を採用するための資金を蓄え、次の年で採用に向け本格的に動いていく方針だ。



大田弘樹氏
大田弘樹氏
工場外観
工場外観
オートサロンに出展されたポルシェ
オートサロンに出展されたポルシェ

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