ロボットで進化する塗装ライン
オートメーションアイテム続々

ロボットメーカーのABBジャパン(本社・東京都品川区、代表取締役社長・アクセル・クーア氏)は工業塗装ラインのオートメーション化に寄与する製品システムの拡充を図る。7月5日、静岡県のABBテクニカルセンターで最新の塗装機及びデジタル技術システムを実演を交えて発表した。「ロボットを起点にハードやソフトの供給だけでなくプロセスの改善を提案する」(ロボティクス事業部・中島秀一郎事業部長)と強みを生かして次世代の塗装工場を提案する。


ABBジャパンのロボティクス事業部は塗装機のグローバル開発製造拠点であるテクニカルセンター(静岡県島田市)とともに愛知県と東京都にアプリケーション・センターを設けて展開。ロボットメーカーとして、塗装機、ブース設計、ロボットによる自動化を一括で請け負えるのが大きな特長だ。

中島事業部長は「当社はアプリケーションが強み。ロボットだけでなくシステム、アプリケーター(塗装機)、アプリケーションするソフトウエアを揃える中で、ロボットをシミュレーションするソフトウエアの提供だけでなく、どれぐらいの吐出量、動作、回転速度で塗装したらどれぐらいの膜厚ができるのかを考え、検討している。塗装のアプリケーションを提案でき実装の設備まで落とし込み、更にはメンテナンスまで見られる」としてロボットを起点にトータルサポートを進めている。

その中で今回発表したのは自動車内外板塗装用途の水性塗料用塗装機とデジタル技術を駆使したティーチングシステム、IoTによるデータサポート「コネクテッドサービス」などだ。

IoT対応ラインアップ拡充
水性自動車向け「RB1000i-WSC」

水性塗料による自動車車体の内板・外板塗装に適した2つの最新ベル型塗装機を実演を交えて紹介した。

その1つが次世代の塗装機として開発したRB1000iシリーズの追加モデルである内部印加型ベル型塗装機「RB1000i-WSC」だ。

RB1000iは業界で初めてIoT機能を搭載した塗装機としてラインアップを拡充。RFID(無線周波数識別機能)と振動センサーの2つを内蔵することでデジタル化に対応している。

RFIDをベルカップ、SAノズル、エアモーターの3つの部品にタグとして内蔵。タグには各部品のシリアルナンバーや出荷時データが読み込まれているため、それを読み返すことで現場での部品管理に応用が可能。

一方、振動センサーはエアモーターの負荷や不具合をリアルタイムで検知することができる。このRFIDと振動センサーを同社のロボットと連動させることでいち早く塗装機の異変を検知し、対応することが可能となる。

同社はRB1000iシリーズとして1年前に内部印加タイプの溶剤塗料用塗装機と、外部印加タイプの水性塗料用塗装機を開発しており、このほどこれまでなかった内部印加タイプの水性塗料対応の「RB1000i-WSC」を上市したことでラインアップの拡充を図った。

塗装機の状況把握をデジタル管理することで「今後実装が進む高度なサービスや分析など未来の生産環境にも対応が可能」と先の展開を見据えている。

新製品の「RB1000i-WSC」は吐出する塗料に直接静電気を印加する方式のため、塗料粒子の吸着性が増し塗着効率に優れている。塗料供給はカートリッジタンクに塗料を充填して使用する設計。塗料供給経路がないために残塗料を排出したり経路内を洗浄する必要がなく、塗料及び洗浄シンナーの使用量が抑えられる。

もう1つの最新の塗装機として水性塗料専用の外部印加型小型ベル型塗装機「RB1000-CE」を上市した。

この塗装機は小型外部電極の装着と小径ベルカップを同時に使用することで狭い部位への塗り込みが可能。加えて小型外部電極を使用することにより、安全距離が短くなり近接で塗装することができるという特長を持つ。

また、塗装機と塗料を供給する塗料タンクがチューブ1本でつながっているため連続塗装が可能で、溶剤専用塗装機でも塗料を変えるだけで水性塗料にスムーズに切り替えられる。

今回の自動車塗装向けの水性塗料用塗装機2製品は国内だけでなく海外市場も見据える。中島事業部長は「特に中国は(環境規制から)水性塗料を使わなければならなくなっており、今後の投資は水性塗料だろう。水性塗料向けのラインアップを増やすことは事業の拡大につながる」との意向を示す。

多様ティーチング簡易化ツール開発

ロボットを使用するにはティーチング作業が不可欠だが、そのティーチングの簡易化に寄与するツールとして、熟練者の動作を再現するティーチングシステム「SRP(Simplified robot programming)」を実演して紹介した他、3Dオフラインシミュレーションソフト「RobotStudio」及びVR空間で認識しダイレクトでティーチング操作できる「RobotStudio-VR」を発表した。

SRPは動作の追跡技術を活用したもので、動きを捕捉、追跡してデジタル化する。そのためティーチハンドル(コントローラー)を使い対象物をなぞって擬似的に塗装することで、作業者の手の動きをロボットプログラムとして記録する。ロボットがどのように動き、どこで塗料の吐出(オン/オフ)するかを簡単にティーチングできる。

他にもIoTによるデータ収集・分析に基づいた次世代サポート体制「コネクテッドサービス」を開発。ロボットの状態やデータ収集が作業現場以外の場所から確認が可能となる。

塗装機及びシステムにおけるデジタル技術の運用で、同社が掲げる"未来の工場、未来の塗装"を指向する。



最新のベル型塗装機を実演した
最新のベル型塗装機を実演した
人の手でティーチング
人の手でティーチング
人の手によるティーチングをロボットで再現
人の手によるティーチングをロボットで再現

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